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そんなわけで、二人揃って帰宅と言うかたちになってしまったが、母はフフッと笑っただけで普通に出迎えた。

母もわかるのだろうか?

双子のようにふたりが同じことをしてしまうことを。

父のところに行ったとき母はいつもそうやって笑う。


そして、おやつの時間になっていたのでふたりに提供されたのは、揚げたてのチュロスだった。スペインなどでは当たり前に食べているものだが、千葉なのに、でおなじみの東京ディズニーランドでしか食べたことがない。

揚げたてははじめてだ。

「なにもつけないでね」

これは我が家のルールだ。とりあえず素でなんでも食べる。そうしないと舌が馬鹿になってしまうからだ。自然のままなら塩だけでおいしいのだから。

チュロスは、売っている状態でなく、長細いままのものだった。素朴な味がする。

外では珍妙な形で400円くらいするやつ、大体はちみつとシナモンがかかっている。

「このままのほうがいいね」

先に口を開いたのは朝天造だった。

俺もそう思っていた。

カリッとして揚げたてなので(帰る時間まで予想通りだったということか)

とてもおいしい。甘いものが好きではない俺にはこれでちょうどいい

「おいしーい!!」

もくもくと食べる朝天造。

なんともかわいらしい。体調が悪かったことなど、本人が1番忘れてケロッとしている。

「これ、絞り金の形だよね」

「ええ、昔のマヨネーズのね」

専門的な会話は女たちのほうが得意だ。こうやって料理を習って朝天造も料理上手になっていくのだろう。

確かにマヨネーズは昔は星のような形をしてでていた(らしい)

俺ももくもくと食べ、自分の部屋に戻る。

Lineで俺を心配する通知が来ていたが特に気にせずとりあえずYoutubeをチェックする。

登録したチャンネルの、何度も見た動画のプレビューが並んでいる。

なんとなく、体から気が抜けてしまった。

昼寝でもしようか……?

そう思ってると コンコン と小さなノックの音が聞こえた。このノックは朝天造のやつだ。

「はいよー」

雑に返事をして、ベッドから立ち上がる。ドアが開くと朝天造が入ってきて、いつもの通り、小さいテーブルの小さい座椅子にちょこんと座る。

なにやら本を持っている。

俺はベッドの端に座ってちょっと上から朝天造を眺める形になる。

「これ、おじいちゃんの日記。前に射躯羽の……飲んだときちょっと話したよね」

思わず俺はゴクリとツバを飲み込んだ。朝天造の顔は真剣そのものだ。

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スイートスイート★マイゴッドシスター 青星円 @riheko

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