かえるとニワトリ
また長く歩き、歩くのに疲れ始めていた。
森はその姿を変えることなく、冷酷にも永遠に続く。
後ろからとてとて歩く音が聞こえてきたので振り返ると、かえるとニワトリがいた。かえるは鶏の上にのって偉そうにふんぞり帰っていた。
ゲコゲコ、があがあうるさいこいつらのことは知っていた。歩かなければいけないと知ったのはこいつらと会ってからだった。
「なんの用だ。」
「君の歩き方を見にきたのさ。」
「見るな。俺はお前らが嫌いだ。」
「そうかい。わかったよ」
にわとりの上に乗っているかえるがそう言うと、二匹は姿を消した
奴らが姿を消したことを確認し、また一人で歩きはじめた。その間、俺は裸になったり、果実を食べたり、黒い月を眺めたり森の愉快な歩き方を模索していた。
背中にチクチクとした痛みを感じ、振り返ると、名前のわからない臓物が空虚に向かって話しかけており、それに応えるように空虚からニワトリの声がしていた。
「まだいるのか!お前ら、こそこそ隠れるようなことはするな」
「すまない。」
かえるとニワトリは透明にしていた姿を現した。
「心配なんだ」
かえるはそう言うと乾燥していた肌に潤いを取り戻す。
「私も心配なんだ」
ニワトリもそういうと、しおれた鶏冠をピンと立てた。
「まだ彼と話し足りないんだ。」
「臓物と話して何が楽しい。俺の見えないところで話せ。」
「ゲロゲロ があがあ」
「ゲロゲロ があがあ」
二人は姿こそ見えないものの確かな声量で臓物と話していた。臓物は自分の体を脈打たせ、どこかに何かを運んでいるようだった。
「透明になって話せと言うことではない!!気持ちの悪い!」
姿を再度表した二人は、まだ話し足りないのか臓物の方をじっと見ていた。
「げろ があ」
一言話した二人の口元からは真っ白な剣が飛び出していた。臓物はその剣の行先を知ってか知らずか、動じずにいる。
その剣は臓物の方、もしくは二人の方へ刺されるものかと思っていたものでその様子を眺めていた。
グリンという音とともに剣先はこちらへ向けられ、勢いよく発射された。
俺の胸を貫いたその剣を見た二人は俺の元に駆け寄ってきた。
「そんなつもりはなかったんだすまない」
「お前らはいつもそうだ。」
二人は謝りながら俺の胸元に刺さっている剣をぐりぐりとねじ込んだり抜くふりをしたりして楽しんでいた。
そんなつもりはない、そんなつもりはないといいながらゆっくりとねじ込んでいる。じわじわとその穴を広げていく。
「ああ、すまなかった。抱きしめていいかい。」
「お前らとは二度と会いたくない。頼むから俺に関わるな」
「そういうわけにもいかないよ。僕らは仲良しじゃないか」
胸に突き刺さっている剣を振り抜き、二人を真っ二つにした。かえるからはどろりと赤黒い血が流れ、ニワトリからは真っ赤な鮮血が流れた。その血は合わさり、手にしていた白い剣を黒く染め、そこが定位置と言わんばかりに俺の胸元に再度突き刺さった。
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