第3話 勤務後は何をしているのか?

 病院には様々なスタッフがいます。


 医師、看護師、検査技師や栄養士、ソーシャルワーカーにリハビリテーション、事務に清掃スタッフ。

 そして、我々薬剤師。

 もちろん、他にも必要に応じて多種多様なスタッフが働いています。


 勤務内容が異なれば勤務体系が異なるのも当然で、昼夜を通して入れ代わり立ち代わりでスタッフが出入りしているのです。


 日中の勤務がだいたい9時から夜の6時まで。

 看護師さんは3交代制だったりすると8時間ごとに交代。

 私は夜間に具合が急変した患者さんに対応するための当直勤務もしていたので、6時から翌朝の9時まで勤務、ということもありました。


 どうでしょう、ハードに思えますか?

 ブラック企業ですと朝は始発で出勤、帰りは終電。

 もしくは会社に泊まり込みで、家に帰るのは月に数回……なんて猛者の方もいらっしゃるかもしれません。



 夜間当直がない他の職場も経験したことがある私個人の感想で言えば、これはかなりハードな部類でした。

 この勤務形態の何が辛いって、生活リズムがガッタガタになることなんです。


 当直明けで後処理を含めるとタイムカードを切るのがだいたい10時ごろになりまして、家に着くのがお昼ごろ。

 眠たい頭を無理矢理動かしながら、日中にしかできない洗濯物や掃除といった家の仕事を終える。


 その頃にはもう身体もココロもクタクタになっているんですが、人間とは不思議なモノで。

 いざ夜に寝よう、と意気込んでも……もう眠くないんですよね。

 無理やり寝るんですが、翌朝起きた時の怠さといったらない。

 むしろ寝ないでそのまま出勤した方がいいくらいです。



 そして段々その生活が嫌になると、どうするのか。


 ――多くの人がお酒を頼ります。


 もう家事なんて丸々1日休日になった時にまとめてやっとけ!!

 メシ? 冷凍もので十分じゃ!!

 酒飲んで無理やり寝る!!

 ……と、そうなるわけです。


 もちろん、アルコールが苦手、飲まないといった人も居ます。

 ただ、お酒を飲んでストレス発散したい! という人が多いので、同じように朝に退勤する人たちで集まって、朝からやっている居酒屋に溜まるのです。


 病院の周りには、もはやそういったスタッフを狙い撃ちしたんじゃないかって居酒屋も多かったです。

 ――ちょっと一杯引っ掛けてから帰ろうか。そういって暖簾をくぐると、同僚の声がする。そんなことも多々ありました。



 そしていつの間にか一晩、ではなく日中を共に過ごし……気付けば数か月後にオメデタ退社していく、というスタッフもいました。

 そう考えると――私ももう少し居酒屋通いをしておけば良かったかも……?


 結局私に残ったのは生活リズムの狂った身体と、ただお酒が大好きになった悪循環、ただそれだけなのでした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る