第4話 職業病に効く薬はありません①

 どのお仕事にも職業病というのがありますよね。


 警察官の方が普段から人間観察をしてしまう、飲食店にご飯を食べに行ったはずなのに店員さんを接客したくなる、すれ違う人のファッションコーディネートをしたくなる、などなど。



 さて、薬剤師にも職業病はあるのか?

 その問いに対する答えはもちろん、イエスです。


 じゃあどんなことをしちゃうの?

 錠剤に似たラムネ菓子を飲みたくなっちゃうとか?



 いえいえ、違いますよ。

 「仕事外では薬なんて見たくもない」なんて言う薬剤師もいるぐらいなので、そこまで直接的な職業病はあまり出てこないと思います。



 あくまでもこれは私の場合、という前提がつきますが……日常生活においても必ずと言っていいほど、商品や料理レシピの記載通りにしっかり計量したくなるのです。



 これはもう、薬剤師界隈では定番中のド定番な職業病ですね。

 

 粉薬や液体の飲み薬があるのは御存知である方がほとんどだと思います。

 実はこのお薬たちは、薬剤師が患者さんに合わせた量ではかり取っています。

 それもヒジョーに細かく。



 粉薬であれば、小数点以下のグラム数まで。

 水薬であれば計量道具に穴が開くほどじいぃっと覘きながら。



 多少の誤差は恐らくそれほど治療効果には影響しないのですが、万が一があってはいけません。そんな思いで細心の注意を払っているうちに、正確に測ろうというのが身体にしみついてしまうのです。



 

 そんな背景もあって、何の気なしにフンフンと鼻歌を唄いながら料理をしていると、いつの間にか仕事中と同じように数字キッチリ計量しようとしていたことに気付きます。。



 ――鶏肉100グラム?


 105グラムだと何となく気持ち悪い。

 どうにかこの5グラムをどうにかしたくて包丁でそぎ落とそうとしたり。


 ――塩コショウが適量!?


 それって何ミリグラム!? 

 ひと摘まみなんて曖昧な量、分からないよ!!


 と、こうなってしまうのです。



 そんなに頻度はないですが、ケーキなんて作ろうなんてしたらもう大変。


 普段から薬局やドラッグストアを利用している方であればお分かりいただけるかもしれませんが、軟膏などの塗り薬の蓋を開けるとピッタリと中身が入っていますよね?


 我々はケーキでも同じことをやり始めるのです。

 スポンジにクリームを塗るときは仕事で培ったテクニックを最大限に用いて、慎重に丁寧に、均一で綺麗な状態にしようと必死になってしまいます。



という風に、今回のお話はこういった『何かを量る』という行為は薬剤師にとってキチンとやりたがる生き物、というお話でした。

 

 次回は計量以外のあるあるを書いていきたいと思います。




 ちなみに私はお風呂の入浴剤でさえ量っています。もちろん、全裸で。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る