10.彼らの関係
俺は即座に振り向いた。
そして俺はその声を発した主を見た瞬間に驚いた。頭ではわかっていたけれど、それでも驚いてしまった。
恐らく第三者から見たら酷く間抜けな顔をしていたと思う。
そう、そこに居たのは
しかも制服姿の彼であった。
うちの学校には服装の校則はなく、制服、私服、パジャマ、全裸何でもありだ。
全裸の場合は学校に着く前に通報されるか、捕まるかはするだろうけど。
それはさておき、一回自分の家に帰ることもせずに学校から直接来たっぽいな。
そうだ、聞いてみよう。
「浅間じゃん。なんでここにいんの? お前の家こっちだったっけ?」
何とか平静を装って浅間に尋ねることができたと思う。
「いや、違うけど……」
「けど……?」
俺は反射的に浅間に聞き返していた。
これは俺の主観だが「けど」と言う人にはそのけどという言葉に続く隠しごとがあったり、内に秘めている思いがあったりすると思う。
「内に秘めてる思い」とか凄く厨二病っぽいな。俺は高二病だけどね。
ってか俺の質問に対する回答遅くね?
早く答えてくださーい。
『会話を成立させるには
それにしても、これ完全に何か隠してますね。
「いや、お前今日も顔色悪かっただろ。だから心配になってお前が教室を出たときから跡をつけてたんだよ」
「そうなのね、ありがとう、ダーリン!」とは当然ながらならない。
だから俺は堂々と目を細め、訝しむ表情も作りながら答えてやった。
「へー。それってホントなのかな?」
渾身のデスボイスを披露できたと思う。
兎にも角にもこいつの言い訳は絶対に嘘です!
誰かと賭けをしたいくらいには彼の嘘を確信しております。
あれだけの時間考えてこの回答は酷すぎる。
俺が採点者だったらこいつの答えは及第点にすら届かず、ギリ赤点って感じかな。
でもそれが建前だったとしても、心配をしてもらったら嬉しくなってしまうのが人間である。
普通に嬉しくなってる自分がいてム・カ・ツ・ク。
ちなみに茅野はというと……うーん、真一文字で終始無言でした。
さて、それでは次の言い訳を聞かせてもらいましょう。
「ところでさ、お前らはここで何やってんの?」
まじかよこいつ……。
ここで話題の転換をしてきました。非常に苦しい足掻きだと思いますよ。
一応その質問には答えてあげよう。いざ参る。
「え、えーっとたまたま帰りの電車で会っちゃったし、最寄りも一緒だったから、無視するのも変だし、一緒に帰ってたんだ。ホントダヨ 」
よし、完璧。
浅間のこちらをガン見しているかのような視線はこの際だから無視しておこう。
最近思うんだけど、「ホントだよ」っていう時って大体嘘だよね。
本当かどうか別にこっちは疑ってないのにホントだよってあっちから「嘘です」って暴露してるようなもんだよね。
ふと茅野に視線を向けてみる。
茅野がこちらの視線に気づいたのかはわからんが、俺の顔を見るなり首を横に振っている。
どういう合図だろうか。
浅間に「俺達のこの状況を説明するな」ってことだろうか。
いや、もう少し深読みしてみよう。
俺達のこの状況を浅間に知られたくないから「殺せ!」って意味だろうか。
今包丁持ってないしなー。どうしよう……。
というか今思ったけどこいつらって知り合いなの?
クラスが違うから知り合いのイメージがない、と言ってもいつ知り合っててもおかしくないか。
同じ学校なんだし。
本人に直接聞いたほうが早いか。
「あのさ、今思ったんだけど茅野と浅間って知り合いだったんだ。中学からの知り合いとか?」
そう尋ねた瞬間、彼らの動きが完全に静止した。
元から茅野は動いてなかったけどね。
というか何この反応……。怖い。
俺の頭、体もそれと同時に拒否反応を示していた。
そして俺は瞬時に耳を塞いでいた。
まるで、この先の言葉を聞きたくないと暗に彼らに伝えるように。
頭よりも体が先に反応していたのだ。
自分の反応に驚いたあとに俺は気がついた。
そうか。こいつらの反応は普通じゃない。
「うーんと、友達?」
浅間は少しの間静止したあとに答えた。
「そうよ。いつから知り合いなのかは忘れたけど」
静止していた茅野は誤魔化すかのように言った。
これは俺が過敏なだけなのかもしれない。
それでも俺は思う。
騙されていたのは俺のほうだったのではないかと。
そうか、こいつらは――。
────────────────────
二作目連載作品
『いじめられていた私がJKデビューをしたら同じクラスの男の子から告白された件。でも、ごめんね。』
https://kakuyomu.jp/works/16817330654542983839
↑こちらも是非ともよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます