6.私の想い
結局、昨日は一睡もできなかった。
というのは嘘で、最初こそ寝れなかったものの、二、三時間ほどベッドで放心状態になっていたらいつの間にか寝ていた。
何時に寝たかは覚えていない。俺の予想だと午前三時くらい。スマホを弄っていなかったのが案外よかったのだと思う。
ほら、ブルーライトを寝る前に浴びると脳が覚醒状態になって寝むれないってよく言うじゃん。
それにしても、小説とかでもショックな出来事を味わったりするとよく、「昨日は一睡もできなかった」とか書いてあるけど、全然寝れたんですけど。
いつもより睡眠不足な感じは拭えないが。
俺のショックがそんなに大層なものじゃなかったから寝れたんですかね? でもなぜ俺はあんなことを……。
いや、でも皆さん経験ありますよね? 少し失敗しただけでまだ取り返しが付くときでも投げやりになってしまってもっと悪い方向に進んでしまうこと。
それでその負の連鎖が続いてしまうこと……。
まあ過ぎてしまったことはこれ以上くよくよしていてもしょうがない。次からは気をつけよう。
俺は時計を今一度確認してみる。どうやら午前の六時すぎらしい。ちなみに言うと、俺が家を出る時間は七時一〇分。
もうそろそろ朝御飯食べないと学校に間に合わなくなるから動くか。
× × ×
家を出た私は、今駅に向かっている。
空模様はというと、相も変わらず晴れとは言えなさそうだ。曇っている。
「せめて空だけでも晴れてくれたらな……」
天気のせいにするのはいけないかもしれないが、ただでさえ暗かった気持ちが曇っているせいで更に沈んでいる気がする。
そう思っている間に私は駅に着いていた。駅名は
うちの学校だと
私はいつもと同じ奥の車両に乗る。日方とは出会うはずのない車両である。
私は、日方が同じクラスメイトの子だと認識し始めた頃の通学時に、ギリギリのところで一度電車に乗り遅れたことがある。
このときはほとんどタッチの差だったので、私が乗る予定だった電車が通り過ぎるのを目の前で悔しがりながらも見送ることとなった。
そして、そのときに私は電車が発車し私の目の前を通り過ぎるのを眺めていると、ある男の子が背中に背負っていたバッグを下ろすのを見つけ、その子の横顔がちょうど見えた。
その男の子こそが彼、
その日から私は、日方が私と同じ最寄り駅なのだと認識し始めた。
そこで私は、日方とは同じ時間の電車には乗るものの、彼と鉢合わせないように彼よりも早く来て速攻で奥の6号車に乗るようになった。
奥の車両に乗っている私と日方が鉢合わせることはない。
たとえ日方が車両内を移動しても、彼は私の乗っている手前の車両で立ち止まってしまうから私のいるところまでは辿り着かない、という仕組みになっている。
その証拠に、今まで一度もで奥の車両にいる私は電車の中で日方に会ったことがない。
そしてなぜ私が日方と鉢合わせないようにしているかというと、知り合いと駅で、特に電車の中で会うと何だか少し気まずく感じてしまうから。
だからって全くの無視をするわけにも行かず、たまに目が合ってしまうのだからこれがまた困る。
それに、この現象は相手側も私の存在に気づいているからこそ起こることなのだと思う。
そうでなければ目が合うことはない。だって、目が合う行為は両方が行動を起こさないと発生しないものだから。
私だけがその子を見たって発生し得ない。相手側も私に目を向けることによって初めてお互いの目が合うという状態が成立する。
私はそう思う。私の知り合いを見る目があまりにも威圧的だったり、視線を感じたから仕様がなく目を合わせてくれた可能性もあるかもしれないけれど。
ここで、日方と私が電車の中で話す仲にすら発展していないことも相まって私たちは電車の中で話すことが出来ないのではないか? という問いが生まれてくるかもしれない。
でも、その点に関しては無視して欲しい。
だって、「私と日方がそんな薄っぺらい関係なわけないじゃない」と私が思いたいからである。
理屈なんて関係ないわ! これでも私は、日方のことがとても好き……なんだと思う。
恋人ではないけれど、友達以上の関係ではあると思う。少なくとも、私はそう思っている。
いや、それ以上の想いを私は彼に抱いている…かもしれない。
「日方もそう思ってくれているといいな……」
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二作目連載作品
『いじめられていた私がJKデビューをしたら同じクラスの男の子から告白された件。でも、ごめんね。』
https://kakuyomu.jp/works/16817330654542983839
↑こちらも是非ともよろしくお願いいたします。
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