4.真実
一度閉まってしまったドアを再び開け、俺は今度こそ玄関に脚を踏み入れようとする。
「ちょっと待って! 何ナチュラルに家の中に入ろうとしてんの」
「まだなんか用あんの? また俺にビンタをお見舞いしたいのかな?」
再びドアがガチャりと音を立て閉まってしまった。
俺はなぜか苛立っていた。いや、ホントはそのなぜかが何なのかに気づいていたが、その感情を無理やりに押しとどめた。
一度その感情と向き合ってしまったら、もうその感情を完全に打ち消すことが難しいことを俺は知っていたから。
一度気づいてしまったらもう戻れない。
感情を抑制することができない……とか言ってみたかった。いや、実際にそうなんだけどね。
「いやしないし。まだ私一時間ぐらいは時間あるから、一緒にどっ―」
「いやいいわ、じゃあまた明日」
俺は家の扉を自分の力で閉めた。開けたら数秒後には勝手に閉まるドアにも関わらず。
だってこれ絶対彼氏と一緒に遊んでて途中で何かしらの理由があって一旦別れて、その間暇だから俺のこと誘ってるだけじゃん。
その証拠に、何? 一時間ぐらいは時間ある? はっ? 習いごとでもあって一時間したら帰らなきゃいけないとかなんですかね。
「絶対にそんなことあるわけないだろ!?」とは言いきれない。
でも、SNSの投稿を見る限り
俺が抱いている印象を実際の茅野に
だから、習いごとはやってないと思う。もしかしたら全然違うかもしれないけどね。あくまでも予想なんだけどね。
確かに俺はあいつのことが好きなんだと思う。少なくとも普通以上の気持ちは抱いていると思う。
でも、なんか気に食わないじゃん。「彼氏と遊んでいる間の暇な時間の埋め合わせ」のために遊ぶのは。
プライドみたいなもんなんですかね。
それ以上、茅野が俺のことを止めることはなかった。
まあ家の中に入った時点で俺は鍵をすぐに閉める癖があるから、止めることは出来ないんだが……。
× × ×
私は数十秒、その場に立ち尽くしていた。
私は彼に酷いことをしてしまったのだろうか。
なぜ私は彼に拒絶されているのだろう。
私、
私が馬鹿なだけなの?
人の気持ちがわからない馬鹿なだけなの?
ビンタがいけなかったのかな?
つい調子に乗ってやってしまった感は正直ある。
ビンタをした後に後悔したもん。
何も手を出す必要は無かったんじゃないかなって。
自分の身体のはずなのに、抑制することを考えずに、相手がどう思うかを考えずに、思考よりも手が、行動が先立ってしまっていた。
つい子供心で、彼がどんな反応をするのかが見たくて……。
彼と一緒に遊びたかっただけなのに。
それとも何か別のことで怒ってるの?
何かに勘づいた?
私、彼氏がいるなんて言ってないはずだけど。
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二作目連載作品
『いじめられていた私がJKデビューをしたら同じクラスの男の子から告白された件。でも、ごめんね。』
https://kakuyomu.jp/works/16817330654542983839
↑こちらも是非ともよろしくお願いいたします。
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