放課後の体育館 4
今日はシオリより俺の方が早く終わった。
体育館の出入り口付近で目立たないようにシオリを待つ。しばらくすると女バスの部員がまとまって出てきた。シオリはその中心にいる。声をかけると面倒くさいことになるので、シオリが一人になるのを待とうと思ったその時、シオリが先に俺に気づいた。
「コウタ君!」
「お、おう。お疲れ」
シオリは囲んでいた部員の隙間を縫って俺の下に駆け寄ってくる。
「エヘヘ……待つのも楽しいけど、待っててもらうのも嬉しいなぁ」
部活後とは思えないほどの満面の笑みは、俺なんかに向けるにはもったいない。
「彼氏が出来たって本当だったの?!」
「そんなー!私たちの綾城先輩が!」
シオリの後ろでは、部員たちの嘆きが聞こえる。
シオリは学年関係なく、学校中の人から好かれていると言っても過言ではない。その中でも特に身近な存在である女子バスケ部の部員たちにとってシオリの存在は大きい。先輩からは可愛がられ、同学年や後輩たちには慕われ、部内でも中心的な存在として愛されている。
そんな部員たちからすると、シオリに彼氏が出来たというニュースは女子とはいえ素直に喜べない人もいるだろう。ある程度想定はしていたが、反応を見る限り誰一人歓迎してはくれなさそうだ。
「君が噂のシオリの彼氏であってるのかな?」
部員たちの中から代表するかのように一歩前に出てきた人が言った。その人は俺以外に『綾城』のことを『シオリ』と呼べる数少ない人物の内の一人で、俺でも顔と名前は知っている。女子バスケ部の部長、
「えっと、まあ、一応……」
「一応?」
柳先輩はいつの間にか俺の目の前まで詰め寄っていた。柳先輩は俺と同じくらいの背丈で女性にしては高く、ドスの利いた声に気圧される。
「いえ!彼氏です!お付き合いさせてもらってます!」
「……ふーん……なるほどねぇ……」
品定めをするかのようにじっくり観察される。怖すぎて一歩も動けない。
「あのさ、一つお願いしてもいいかな?」
「なんでしょう?」
「悪いけど、シオリと別れてもらっていい?」
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