第5話 【名前を受け取る日】
-----------------【ゼロ】----------------
旅に出て約2週間。ようやく最初の目的地、城塞都市『ナガラルト』に夕方頃に到着した。
入国手続きはランダさんのおかげですんなり通れた。本来は身分証明のない者は1、2時間かかる手続きをしなければならないらしい。
俺達が町に入ってまず目に入ったのは、人の多さだ。
「おいゼロ!見て見ろよ!人があんなにいっぱいいるぞ!」
「すげぇ、、こんな人数見たことねぇ!しかも店のあんなにいっぱいあるぞ!」
俺とレイは初めて町にとても興奮していた。馬車の中から見ていたが、何処を見ても初めて見るものばかりだ、食べ物も、店も、全てに興味をそそられる。そうして町を見ていると馬車が止まった。
「さぁ二人とも降りてくれ」
どうやらランダさん達も目的地についたらしい。そうして俺達は馬車を降りた。
「じゃぁ私はランダさんと依頼の手続きを色々としなくちゃいけないから、2時後にまたここに集合でどう?色々町を見て回るといいわ」
「分かった、またここに2時間後に集合ね。色々お店とか見て回るよ!おい、レイ行こうぜ!」
「おう!」
俺達はリザさんと2時間後にまた会う約束をして町の探索を開始した。
-----------------【レイ】----------------
1時間ほど町の探索や、食べ歩きをしたあと俺隊は路地裏の探索もしていた。
「町の路地裏ってちょっと薄暗くて気味がわるいけど意外とここにもお店があるんだな」
ゼロの言う通り、路地裏は正直何もないと思っていたが意外と店も出店していたりしていた。しかしメインストリートの店と違って、ぼったくり店などが多かった。
「ん?なんだこの店」
裏路地の探索をしていたら少しきになる名前の店を見つけた。
「奴隷市場、、?」
「おい、レイこれって、、」
本でしか知らないが、この世界には奴隷商人と呼ばれる人や動物を物のようにお金で取引しているらしい。かなり黒にちかいグレーゾーンの商売をしていると聞いたことがある。
「おっおい、、レイここに入るのはヤバいって」
冷やかしで入るわけじゃない、だけど俺はこういう黒い場所も知識も全てを知りたい。
中に入ると、
メガネをかけた老人が1人出迎えてくれた。
「おや、ここは子供がくる場所じゃ、、いや、失礼奥に案内しますよ」
追い返されるかと思ったが、老人は俺達を奥へ案内してくれた。
「なぁ、こういう場合って追い返されるんじゃないのか?」
「確かに、、ちょっと警戒しといた方がいいかな、、」
入ることを決めたのは俺だが、中で何が起きるか分からない、警戒をしていて損はないだろう。そんな感じでゼロとお互いギリギリ聞こえるくらいの小声で話していた。
「あぁ、そんなに警戒しなくてもいいですよ。別に貴方達に危害を加えるつもりはありませんから。貴方達を案内しているのは貴方達が金貨を197枚も持っているちゃんとしたお客様だからですよ」
その発言を聞いた瞬間俺とゼロは5mほど後ろに飛んで距離を取った。いくら近くに居たっていっても、俺らと爺さんは4mは離れていてすぐ横にいる人間が聞き取れるか、聞き取れないかのギリギリの小声で話していたし、爺さんは俺達が持っている金貨の枚数を正確に言い当てた。
「だからそんなに警戒しなくても何もしませんって、ただ私は金貨の擦れる音と話し声が"見えた"だけなんですから、、さっ着きましたよ」
見えた?聞こえたではなくて?だが、この爺さんは本当に俺達に危害を加える気はないようだ。だが最低限の警戒はしておいた方が良いだろう。
目的地に着くと、色々な声や音が聞こえた。動物の鳴き声、人の鳴き声、悲鳴、しかしそこは意外と綺麗な場所だった。
「こういう場所って、薄暗くて汚れてるって思ってたんだけど、、、意外と綺麗だな」
「それはそうですよ、大切な商品ですからね。衛星管理はしっかりしてますよ」
俺達は1つ1つ案内されるがままに動物や人が入っている檻を見て回った。
「この人たちは、どうにかここから解放できないんですか?」
俺は思わず思っていたことをそのまま言った。だってそうだろ?人や動物が物のように取引されている。
「おい、レイ、、お前だって、そういう場所だって分かってて入ったはずだろ?」
「わかってるけど、、」
分かってはいるが、どうにも納得がいかない。
「お客様が買っていただけるなら、別に私はかまいませんがね。しかしね、ここにあるものは全て店の商品なのですよ?変な気は、、起こさないようにおねがいしますよ?」
「「・・・・・・」」
俺達は黙って案内されるがままに檻を見て回っていた。その時。
俺の目に檻の隅っこでじっとしている銀髪の女の子に目が行き、立ち止まった。
「どうされました?何か欲しい奴隷でもおられましたか?あぁ~、その奴隷ですか、その奴隷は金貨100万の値がついたんですよ。これでもかなり値切られた方でね、もう少しで買い手の人がくるんですよ」
「あの、、」
俺が言葉を言い切る前に、ゼロは俺にゼロが持っていた有り金すべてを渡してきた。
「ゼロ、、」
「1ヵ月、買い出し当番おまえな」
どうやら俺が何をしようとしていたかを察したらしい。
「あの、この子は金貨100枚の値段がついてるんですよね?」
「えぇ、、そうですが」
自分が何をしているか理解はしている、でも俺はこの子から視線を外すことが出来な方。
「ここに有り金全て、金貨197枚、銀貨56枚あります。この子を売ってください。」
「ほぉ、金貨197枚と銀貨56枚ですか、、ですがよろしいので?それ、貴方達の有り金全てでしょう?まぁ、他のお客様より約2倍近くの値段で買ってくれるのですから、こちらとしてはありがたいですよ」
「はい、この子を買います」
「了解いたしました、契約書を持ってきますので少々お持ちください。」
そういうと爺さんは店の契約書を取りに行った。
5分ほどすると爺さんが帰ってきた。
「はい、たしかにお金の方は確認ができました。ではこちらの紙の上に手を置いてください」
多少警戒しつつも俺は紙の上に手を置いた。そうすると紙が光り初め、気が付くと俺の手の形が刻まれていた。
「はい、契約完了です。この契約に使った紙を使えば奴隷は貴方の言う通りに動きます。ですが、気を付けてくださいね、その奴隷反抗心と魔力が以上に強く、首輪で魔法を使えなくしているのに、近づくと魔法を撃ってきますから」
そういうと爺さんは檻の扉を開け中に入れてくれた。
1歩1歩ゆっくりと近づいた。しかし、彼女まで2mのところまで進んだ時、右肩に激痛が走った。
「っ!」
「おい!大丈夫かレイ!」
どうやら彼女が無数の風の刃を固めたような物を飛ばしてきているようだった。
「こない、、、で」
かなり怯えているようだった。
近づけば近づくほど攻撃は激しくなった。右手、腹部、左肩、頬、体のあらゆる場所に激痛が走り、血が流れている。
「来な、、いで、、こないで!もっと、、痛いことするよ!」
とうとう正面まで来て手を伸ばそうとしたとき。
「来ないでぇぇーー!!」
今までとは比にならないほどの大きさの風の刃が直撃した。
「っ!!」
「痛くない、、の?」
一瞬倒れそうになったが何とか堪え、彼女を優しく抱きしめた。
本当は物凄く痛い、でも、、、
「痛いよ、、でも君の方がもっと痛い目や辛い目に遭ったんだろ?そんなもんに比べればこんなもん、屁でもないよ」
そういうと彼女は安心したのか体の力を抜き、涙を流し始めた。
「君、名前は何て言うの?」
「・・・サナ・・」
そういうとサナは、目を閉じて眠りについた。最低限の服しか着ていなかったので、俺は自分のつけていたマントをと上着を着せ、サナを檻の外に出した。
「なぁ爺さん、この子はもう自由なんだな」
「えぇ、その奴隷契約書がある限り一生君の奴隷ですよ」
もうそれ以上の言葉を聞かずに俺達は店の外に出た。
「ご利用いただきありがとうございました。」
店を出て少し歩いた時ゼロが口を開いた。
「その子、、どうするんだ?どうせ後先考えてなかったんだろ?」
ゼロが言っていた通りだ。後先なんて一切考えていなかった。
「とりあえずもうちょっとで2時間だ、とりあえずリザさんと合流しよう」
「あぁ、そうだな」
-----------------【ゼロ】----------------
広場でリザさんと合流しある程度の経緯を話すとリザさんは泊まる宿に案内してくれた。
「で、有り金全て使ってその女の子を奴隷にしたのね?」
「いや、、奴隷にしたわけじゃぁ、、」
「この子を買ったのね?お金で」
「はい、、」
俺は正座をして説教を受けていた。それもそうだ、俺はリアをお金で物と同じように取引して買ったのだから、、
「それにしてもこの子何処かで見たことあるような、、」
リザさんは少し不思議そうな目でサナを見ていた。その時、サナは目を覚ました。
「ここは、、、、っ!」
俺達を見た瞬間また怯え始めた。
「レイ、貴方この子の名前分かる?一応契約者でしょ?」
「サナって言ってた」
「サナ、、?サナっ!?まさか!」
リザさんは、サナの名前を聞いた瞬間まさか、という顔をしていた。
「もしかして、サナ様ですか!?私です!リザーナ・ルーダスです!」
「え?、、リザ?リザなの!?」
そうしてリザさんとサナは抱き合って泣いていた。話の内容からしてどうやら知り合いらしい。俺達は完全に話に置いてきぼりにされていた。
「え?リザさん、サナと知り合いなのか?」
「えぇ、そうよ、、私が4年間探していた人よ、、」
まさかのリザさんが町を転々として4年間探していた人物とはサナの事だった。
「サナのことを様付けしているけど、なんか偉い人なのか?」
ゼロが何気なく質問をするとリザさんからとんでもない一言が帰ってきた。
「偉いというか、サナ様は王族よ」
「「・・・えぇぇーーー!!!王族だってぇーーーー!!?? なんだそれ」」
俺とゼロは驚いたが、正直王族というのを理解せず騒いでいた。うる覚えなのだが、確か偉い地位の人たちの事だった気がするような、しないような。
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