偶然知ったヒミツ 4

「なんで分かったの」


津田部長は観念した様に、大きな溜め息を吐きながら両手を上げて降参のポーズを取った。


「最初は、全然分からなかったです。なんか覚えのある顔だな、って位で。でも、津田部長が顔をそむけた時に――」


私が全てを言い終わる前に、津田部長がガバッ!と耳元に手を当てる。


どうやら、私の言いたい事を瞬時に理解した様だった。


「……痣ね」


「はい。その痣、社内で知らない人はいませんから」


津田部長の耳の後ろには、星形の痣がある。


これは、同じ会社に勤めている者なら誰でも知っている事だった。女子社員の間では『ラッキースター』などとも呼ばれている、なんとも珍しい痣。


「ぬかったわ……いつもならファンデーションで隠すのに、今日に限って忘れるなんて……」


津田部長は、脱力した様に街灯にもたれ掛かり頭を抱え、そのまま動かなくなってしまった。


こっちも驚きを隠せないが、余りの落ち込み様に私なんかがこんなヒミツを知ってしまって、申し訳なくなってくる。


「あの……」


「あなた、秘書課の美園江奈みそのえなさんよね?」


津田部長の意外な言葉に、私は目を丸くする。


私の事を知っていてくれた。


「……私の事、ご存知ですか」


「ええ。秘書課は会社の華ですもの。その中でも美園さんは有名よ。美人で仕事が出来るって」


え、なにそれ。


「そんなデタラメ、信じないで下さい」


私はキッパリ否定する。


「あら。仕事が出来るって点は分からないけど、美人って言うのは本当じゃない」


「そんな……」


「せっかく褒めてあげてるんだから、素直に受け取りなさいよ」


「……ありがとうございます」


じゃあ……と、私は深くお辞儀をする。


「……………」


「……………」


沈黙。


(ど、どうしよう……)


改めて考えてみたら、物凄い重大な秘密を知ってしまったよね?

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