4:魔王・中ボス その1
「強い魔力を感知して来てやったら、見覚えのある顔だな?」
中ボスが恐竜のような口を開いた。擦過音が多いけど、充分聞き取れる声だ。
「ああ、何年か前に殺した勇者か?」
しばらく考えた末、中ボスは長い舌で牙をなめながらそう言った。
「殺したつもりだったヤツが生きてるたぁ楽しいな。また殺されにきたのか? 俺に殺されるのがやみつきになったか?」
「」
「今度はもっと時間をかけて殺すか。結構、面白かったからな、長持ちして」
僕が死ぬ様子を思い出したのか、中ボスはしゃっくりをするような音を出した。笑っているのかも知れない。
「前はもっと雑魚が大量にいたが、今度はふたりと1匹か? まあ、あまり変わり映えはしねぇな」
「そう思うか?」
「ああ、そうだ。この世界の連中はみなクソみてぇだな! 手応えがねぇ。俺が強くなったのは、てめぇを倒した時だけだ。魔王もたいしたことはなかったからな!」
「なっ!? まさか、おまえ!?」
「てめぇを倒した後、城に戻ったら契約ってのが消えててな。バカな魔王を殴り殺したさ! 何が起こったのかわからねぇって顔が笑えたぜ! 自分が身を削って召喚した勇者に殺されるなんてな!」
僕を殺した中ボスは召喚者であり、魔王を超える力を持っていたのだ。
魔王を倒すための経験値アップのつもりで中ボスに向かって行ったら、そいつは魔王以上だったわけだ。そりゃ勝てないだろ、あの時の僕! それに今の勇者はもっと無理。まったく無茶振りにもほどがある。
「契約が完了したのに、なんで元の世界に戻らないんだ?」
「元の世界に戻るだぁ? なんでこんな楽しい世界から出なきゃいけねぇんだ?」
「楽しい?」
「魔族も人族も俺にゃ敵わねぇ。俺は最強だ。好きな物はなんだって手に入る。元の世界とはえらい違いだ。だから、飽きるまでここで遊ばせてもらうぜ」
中ボス改め魔王はカチカチカチと歯を鳴らして哄笑を放った。
「魔王の野郎、人間どもが勇者を召喚して着実に部下を失ってるのに怯えてな。俺を喚んだのよ」
ってことは、僕が頑張ったせいで魔族も勇者を召喚したってワケか……。これじゃ堂々巡りじゃないか。いつまでたっても終わらない。犠牲者が出るばかりだ。
「……ここに勇者と数人が来たよね。どうした?」
「あ? 勇者だぁ? あの雑魚どもか? 悲鳴を上げて逃げ出しやがって。後は部下に任せたから知らねぇよ。その辺りに転がってんじゃねぇか?」
バカにした笑いを上げると、は虫類特有の長い舌で舌なめずりをして僕を見下ろす。
「俺から聞きたいことはこんなところか? じゃあ、前の続きをしようじゃねぇかっ! 結果は同じだろうけどよっ!」
異世界からの召喚者・魔王は言い放つや僕の目の前から消えた。
身構える間もなく、目と鼻の先にでかいトカゲのような顔が出現し、腹の辺りで何かが爆発する。
と思ったらトカゲ面が急速に遠ざかっていく。そして、背中に衝撃。
「ぐふっ……」
息が肺から押し出され、咳き込む。
魔王が一瞬で接近し、拳か脚で腹を蹴り飛ばされ、岩に激突したのだ。
「主殿っ!?」
「レオッ!?」
未緒とサフィが悲鳴を上げた。
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