4:昔の恋人 その1
最初に召喚された世界はかなりヤバい状態だった。
人族は魔族に追いつめられ、それぞれの国は救援の手も届かないまま、孤立させられていた。魔族はジワジワといたぶるように人間を殺していた。
召喚された僕は右も左もわからないまま、契約させられ、魔王を殺すまで帰還できないようになった。さもなくば死か。
加速、一撃という正面切って戦うスキルじゃなかったため、徹底的に気配を消して魔王を暗殺する方針でスキルを磨いた。
幸いにも、ずっとぼっちだった僕は何もしなくても気配を消すことが出来た。暗殺者向けだったわけだ。
自在に使えるように1年近く特訓させられ、まずは最も近い砦に向かった。いわゆる小ボスを倒すためだ。
上手くいった。瞬殺だった。
が、上手く行きすぎたことで、僕だけでなく周囲の連中も勘違いした。
そして、中ボスを狙った僕は、文字どおり棍棒で叩き潰された。スキルはまったく役に立たなかった。
契約からは自由になったけど、見事に死んだ。
しかし、それで終わらなかった。目を覚ました時、僕は別の世界の赤ん坊になっていた。
転生だ。
僕は人族のレオとして新しい人生を送ることになった。
言葉を覚え、自由に動き回れるようになった時、前の世界で得たスキルが使えることに気づいた。きっかけは僕が目の前にいるにもかかわらず、誰も僕の存在に気づかず探し回っていることが何度かあったからだった。知らない間にスキル隠密を使っていたわけだ。スキルぼっちでもいいけど。
それから他のスキルも試していると、さらに別のスキルも持っていることがわかった。魔法だ。
その世界は人間とエルフがそこそこ仲良く暮らしていた。
一応の棲み分けはなされていて、僕の村はちょうどその境目辺りにあった。村の中でも人間とエルフは隣同士で住み、交流も盛んだった。
そして、エルフは魔法が使えた。
歩けるようになると、僕は外に出て、隣の家にエルフの少女が住んでいることを知った。
幼馴染みのサフィールリアーナ・アルティアール――サフィだ。確か、エルフは名前に母親の名前の一部をつけるしきたりがあったので、サフィールが名前。サフィは家族や友人など親しい者しか呼べない愛称だ。
だから、さっき出会った時に思わずサフィと口走ってしまったのは大失態だった。誤魔化せたとは思っていない。怪しんでるだろうな、サフィは鋭いから。
とりあえずはサフィが無事なのがわかって、それだけでも満足しないと。
この世界にいられるのは後2日――明後日の昼までだ。
それまでにHOWの連中を探ってみよう。
今日のところは寝て、翌朝から行動しよう。
サフィを守るためだと思うと、この任務もただの仕事じゃなくてやり甲斐がある。
僕は珍しく気合いを入れた。
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