第4話 ちょっと待っててね

あの日もそうだった。

たまたまが重なって、小銭がなかったからちょこっと買い物をして慌てて戻ってきておじさんめがけて歩いて行ったのだった。

ところがひさこがおじさんの方に向かったにもかかわらず、おじさんは別の方向に小走りで走り出した。

おじさんの走り出した方向に眼をやると、若い女の人がうずくまっていた。

ひさこもあわててそちらのほうに駆け寄った。

駆け寄ったときにはおじさんが「どうしたの?だいじょうぶ?」としきりに声をかけていた。女の人は何も反応しない。

おじさんは「ちょっと待っててね。今お巡りさん呼んでくるから!」と立ち上がった。

多分ここ何年も走るようなことはなかったのであろう、気持ちだけは焦るけど足がもつれてもがくようにしながら交番のほうに走っていった。

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