第2話 北口のおじさん

ひさこがいつもビッグイシューを買うおじさんは、ひさこが乗り換えに使っている駅の北口にいる。

ひさこが使うのは南口だから、何かの用事があるときにしか北口にはいかない。

おじさんは40代ぐらいだろうか。

中肉中背でいつも路上にいるからか赤黒い顔をしている。

かなり年季の入った服装ではあるが、こざっぱりとしていてよく路上で生活している人のようなにおいやいで立ちとは違う。


ひさこがいつもそのおじさんから買うことにしている理由はいくつかある。

第一の理由はひさこの乗換駅ということもあり便利なこと。

第二の理由は雑誌が一つ一つ透明フィルムの袋に入っていること。

別に袋に入っていることが重要なのではなく、おじさんが一冊一冊丁寧にラッピングしている姿を想像してしまってなんだかほっこりさせられるから。

そして最大の理由は別れるときに元気に「おつかれさまでしたぁ!」と言ってくれるから。

なんだかこちらもうれしくなって、お互いそうよねっという気持ちを込めて「おつかれさまでしたぁ!」と返すことにしている。

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