赤いトートバッグ
ただの、いちどくしゃ
第1話 ビッグイシュー
ひさこが気に入っている雑誌にビッグイシューという一風変わったものがある。
ホームレス状態にある人などが路上で販売して1冊450円を販売すると230円が販売者の収入になるしくみで、社会復帰第一歩の役割をしている。
中身はというと大阪なおみなどの大物のインタビューや環境問題社会問題を取り上げたりだと、お値段の割にはかなり内容が濃い。
そこがひさこのお気に入りの理由である。
路上販売のテリトリーが決まっていて、赤い野球帽と赤いベストのコスチューム。
そこまでは発祥の地イギリスとほぼ同じだ。
ところがここからが大きく違う。
イギリスでは雑誌を高らかと持ち上げ、大きな声で「ビッグイシュー!ビッグイシュー!ビッグイシュー!」と叫びながらテリトリー内を歩き回る。
なので観光地や大都市ではお決まりの光景である。
その一方で日本では胸のあたりに雑誌を掲げた状態でただ無言でじっと立っている。
呼び込みをしてはいけないなどいろいろと制約があるのだろうが、完全に通りと同化してしまっていて気付く人はほぼいないだろう。
ひさこは海外旅行の際によく見かけたので「あら日本でもあるんだわ」と気が付いたが、そうでなければ気にも留めなかったであろう。
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