第77話 狂ってる
「何しに来たんだよ」
俺は玄関でニコニコと笑う乃々華に向かって問いかける。コイツ、なんでこんな笑って俺ん家に来れるんだよ。自分がなにをしたかわかってるのか?
「えー? ノノ、前に言ったよ? 乃亜さんと遊びたいって。だから来たのになぁ〜♪ というわけで……乃亜さぁ〜ん! あっそぼぉ〜!」
「んなっ! お前っ!」
「やんっ! キョウのえっちぃ〜」
まだ寝てるはずの姉さんを起こさないために急いで口を押さえようとするけど、その手は掴まれてしまい、そのまま乃々華の胸に押し付けられる。
「もう、触りたかったらいつでもどこでもノノの許可なんて取らないで好きなだけ触っていいのに。服の上からでも、ブラ越しでも……直にだって」
「やめろっ!」
シャツの裾をまくってその中に俺の手を入れようとすら乃々華。俺はすぐに胸から手を引いて少し距離をとった。
「え〜なんで? だってもう浮気にならないでしょお?」
「……なんでそれを」
「あはっ! あははっ! やっばり! やっばり別れたんだ! だよね。その顔見ればわかるよ? 眉間にシワが寄って目尻も下がって辛そうな顔。今も怒ってるのにその顔は変わらない。ずっと……ずぅ〜っとキョウの事見てたんだから」
「……乃々華、お前なんで…………」
「え〜? もう何回も言ってるのにわからないの? それはね…………好きだからよっ! キョウの事が好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで堪らないのっ! ……ねぇキョウ? 私ね? 処女なの。私の中にはキョウしか受け入れたくないの。だから我慢できなくなったら言って? 家でも学校でも……キョウが望むのなら人が見てる所でだっていつでも求めてきていいの。毎日毎日毎日毎日毎日キョウの事を考えながら慰めてるから準備は万端だから。ね? もう彼女もいないんだから誰も傷つくことはないわ。なんなら私をそれだけの為に使ってもいい。だからね? 何も考えないでしたいことをして? なんでも受け入れてあげるから」
乃々華はそう言いながら目を蕩けさせ、自分の下腹部を撫でる。
「く、狂ってる……」
誰だコイツは。乃々華はこんな奴じゃ無かったはず。どうして、こうなったんだ。
「そんな事言うなんて酷いなぁ。ノノはね? 狂ってるんじゃなくて、狂おしい程にキョウを愛してるの。今までの私は自分では動けなくてただ待つだけ。でもそれじゃダメなんだよね。だからキョウを嘘つき女に取られちゃった。取られないようにするには繋ぎ止めないと。何をしても、なにを使っても……」
いつの間にか靴を脱ぎ、ゆっくりと近づいてくる乃々華。その時──
「んにゅ……だぁれ? あーノノちゃんだぁ〜」
二階から降りてくる姉さん。
すると乃々華はさっきまでの狂気が嘘みたいにいつも通りになって姉さんに近づく。
「乃亜さぁ〜ん! 久しぶりにあそびにきたよん♪」
「え。ほんとっ! やったぁ〜! あそぶあそぶ! じゃあ乃亜のお部屋いこっ! あ、でも乃亜、朝ごはんまだ食べてないの……。だから先にお部屋で待ってて!」
「うんっ! いいよ〜ん♪」
「ご飯ご飯〜♪」
鼻歌を歌いながら機嫌良さそうにキッチンへと向かう姉さん。そして廊下にはまた俺と乃々華だけになった。
「じゃ、そういう訳だから乃亜さんと遊ぶね? 今更帰れなんて言わないでしょ? 乃亜さんあんなに楽しそうにしてるんだもの」
「ちっ……」
「あ、そうそう!」
階段を登り始めた乃々華は、何かを思い出したかのように振り返り、そのまま降りてくるのではなく、俺に向かって倒れてきた。
「危なっ!」
「ふふふふ……やぁ〜っぱり助けてくれた。キョウは優しいね」
「は? 何を言っ──ん!?」
いきなり俺の唇に吸い付いてくる乃々華。まるで飢えてるかのように貪りついてきて、口内では舌が暴れ回る。
「は、離れろ!」
俺が強く押し退けると、乃々華はニヤリと笑い、
「おーいしっ♪」
そう言って自身の唇を舐めた。
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