第68話 コス……プレ?

 違うってなにがなんだ?

 俺のそんな疑問をよそに、海琴さんは必死に制服を鞄に押し込んでチャックを閉める。

 少しスカートの裾がはみ出てるけど。



「えっと……」


「違うんだもん!」



 いや、違くないでしょ。それ、明らかに久鳴谷学園の制服じゃん。なんでそんなものを持って俺ん家に来てるんだ?

 ……あ、もしかして。



「海琴さん、その制服の理由って──」


「こ、これは大学で使うの! サークルの集まりでこれ着て踊ろうかってことになってそれで! だから今着てる訳じゃないんだからね!? 女子大生なんだから! あ、そうそう! 私の母校が久鳴谷なの! だからこの制服持ってるだけなんだからね!? 今日の集まりって言うのもそれだったの! わかってくれた!?」



 なんかめっちゃ早口で言われたけど、つまりこういう事だな?

【大学で海琴さんがJKコスプレをして踊る】

 と。なにそれ超見たい。むしろ今見たい。

 ……じゃなくって!



「いや、そんなの言わなくてもわかってますって。最初に海琴さんが自分で大学生だって言ったじゃないですか。わざわざ歳を誤魔化す意味もわかんないですし」


「あ、あうあうあう……そ、それはまぁ確かにそうなんだけど……」


「それに俺が思ってたのは違うことですよ。てっきり同じ高校生みたいな格好して遊びたいのかな? って思ってました」


「ふぐぅっ! そ、それはちょっとキツいというか無理というか、制服着て外に出るのは色々マズいというか……」


「まぁ、そうですよね。同じ大学の人に見られたら何言われるかわかんないですもんねぇ……」


「むしろ逆……じゃなくって! そ、そうだ! えっとね? 二人だけの時だけなら着るよ! なんだったら今でも!」



 ……お? まじか? 期待してなかったわけじゃないけど、まじか? じゃあお願いしちゃおっかな?



「ぜひっ!!」


「ううっ……凄い良い返事だよぉ〜」



 あったりまえだい! これで同じ高校生カップルみたいな感じを楽しめるからな!

 確かに歳上は好きだけど、別に歳上じゃなきゃ駄目ってわけでもないし。



「じゃあ……着替えるね……」



 海琴さんは少し元気なさげにそう言うと、いきなりテニスウェアを脱ごうとする。

 まさかの行動に何も言えずに固まっていると、白にピンクの刺繍の入った下着と、胸の下半分が見えた所で我に返った。



「み、海琴さん!? 待って待って待って!」


「へ? ……ひゃあっ! 杏太郎くんは後ろ向いててっ! うぅ〜……いつも部屋で着替えてる感じで脱ぎそうになっちゃったよぉ……」



 ありがとうございました。いいものが見れました。ちょっと声かけるの早かったかな? って思ったのは内緒。

 それにしても……可愛いブラだったな。そして実に重そうな……うん。俺の彼女最高。


 そして着替えの音が止まると同時に海琴さんの声。



「着替えたよ〜?」



 振り返った先には、いろいろけしからん女子高生バージョン海琴さんがいた。ブレザーのボタンが実にキツそう。



「ありがとうございます」


「なんでお礼なの!?」



 だって……ねぇ? こんなの見たらお礼言うしかないでしょ。

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