第46話 家への帰り方がわかりません

 それにしても、銀髪美少女がエロゲーの制服を着るとこうも艶かしいのか。

 海琴さんが清楚代表だとすれば、時雨はその真逆だな。とにかくエロい。


 って待てよ? 時雨のやつ、この格好で水族館行ったのか? いや、あの放送で聞こえたのが時雨本人だったらの場合だけども。


 俺は、違うことを祈りながらも、ほぼ確信しながら聞いてみることにした。



「あ、あのさ? 時雨は今日は何してたんだ?」


「私ですか? 今日は朝起きた時に無性にタツノオトシゴが見たくなりましたので、水族館に行って来ました」



 やっぱりー! はい、あの迷子の十七歳は時雨で確定! おいマジか。この格好で? 痴漢ホイホイじゃないのか!? さすがにちょっと心配になるんだが!?



「だ、大丈夫だったのか? その……ほら、混んでただろうし、色々と」


「いいえ? そんな事はありませんでしたよ?」



 あ、これはあれだ。美人すぎて逆に近づけないパターンか。もしくは異質過ぎて。

 まぁ何も無かったらのならいいんだけども。

 そう言えば気になることがもう一つ。



「なんでタツノオトシゴ?」


「師匠、思い出してみてください。タツノオトシゴのあのフォルム、西洋風の剣の柄に似ているではないですか?」


「に、似てる……か?」


「似てますよ? タツノオトシゴに横から柄の無いナイフが刺さっているのを想像してみてくだい。…………剣ですよね?」


「お、おう? 剣……かぁ?」


「剣です。フランベルジェです」



 わっかんねぇぇぇぇ!! そんな想像をした事も無いし、想像してみたけど串焼きにしか見えねぇよ!? つーかフランベルジェって何!?


 そしてそれを真顔で言うなよ。

 両手の大量のエムエヌの袋がなんかシュールで笑っちまうだろうが。キッズセットフルコンプってどれだけ買ったんだ!?



「ところで師匠」


「ん? なんだ?」


「先程の師匠にキスしていた女性はいったいどなたですか?」



 あ、やっぱりその質問来る? いやぁ〜しょうがないなぁ。恥ずかしいけどちゃんと言わないと海琴さんにも失礼だもんな!



「あの人は俺の彼女だ。つまり恋人。ステディだ」


「師匠の恋人……。つまり弟子である私にとっては姉のようなものですね!」


「なんでそうなる?」


「今度改まってご挨拶しないといけませんね。きっと素晴らしい技が使えるのでしょうし」


「やめろ」


「ですが残念ですね。もう少し早く声をかけていたら、このキッズセットのバーガーとポテトをお譲りする事が出来たのですが」


「俺の話聞いてる? ねぇ、師匠の話はちゃんと聞くものなんじゃないの?」


「そうです! 師匠、良かったら食べませんか? 私一人では食べきれないのです」



 まぁ、そりゃそうだろうな。



「まぁ、くれるって言うなら貰うけども」


「でしたら今から私の家に行きましょう。そこでキッズセットパーティしましょう」


「俺! 今! 彼女がいるって言ったばかりだよな!?」



 ましてや今日出来たらばかりだぞ? それで他の女の子の家になんて行けるかよ!



「師匠。先程は言いませんでしたが、実は私、水族館で迷子になったのです」



 いきなりどうした。知ってるよ。アナウンス聞いたよ。あのイルカの飼育員が兄貴なんだろ? どうにかしろよ。



「そうなのか? 大丈夫だったのか? てか迷子て……」


「はい。実はあの水族館には私の兄が勤めていまして、すぐに迎えに来て貰えたので何事もなく済みました」



 何事もあったよね? 迷子になってるよね?



「それで帰る際に兄から、「お前は方向音痴なんだから、これでタクシー使って家に帰りなさい。むしろよくココまで一人で来れたね!?」って言われてお金を貰いました。あ、ちなみに水族館へはお母様に車で送って頂いたので迷わずに着けたのです」


「そ、そうか……。それでその話と時雨の家に行くのになんの関係が?」


「関係あります。兄からお金を貰った瞬間、天啓が降りたのです。このお金があれば何でも買えると」


「…………おい。ちょっと待て。まさか……」


「おかげでフルコンプが出来ました。ですが、その代償に家に帰る手段も無くしてしまったのです。これが等価交換というものなのですね……」



 それは等価交換違う。自業自得だ。

 てかこの話の流れ的に、時雨が言いたい事って……



「なぁ、もしかして……」


「はい。師匠、私を私の家まで送って行ってくれませんか? 住所は覚えてます。ただ、家への帰り方がわかりません。スマホも忘れてきてしまいました。八方塞がりです。両手は戦利品で塞がってます。お願いします」



 だよな。そうだと思ったよっ!!

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