第25話 母さんは神絵師 そしてサラシを巻いた少女

 俺は感動の夕食を終えたあと、姉さんと母さんとでゲームで遊び、またしても途中で寝落ちした姉さんを部屋まで運んでベッドで寝かせた。


「寝かせてきたよ」

「お疲れ様。夜食にパンの耳揚げたけど食べる?」

「じゃあ、部屋で食べるかな。母さんは? またやるの?」

「もちろん! 何気にちょっとした小遣い稼ぎにはなるのよ? はい、別の皿に少し移したからコレ持っていきなさい」


 そう言って母さんは、パンの耳を揚げたものに砂糖をまぶしたやつを深めの紙皿に入れて渡してくる。


 ちなみにと言うのは、絵を描くのが趣味の母さんによる、お絵描き生配信。

 リアルタイムでイラストを描きながら、それを聞いてるユーザーの質問に答えたりしているらしい。母さんは結構人気らしく、フォロワーがもう少しで十万とか前に言ってた気がする。どんだけだよ。


 そしてその配信以外にも、たまに時間がある時はファンからのリクエストや、SNSのアイコン用のイラストを有償で描いたりしている。

 簡単に描いたのは見せてもらった事があるけど、めちゃくちゃ俺好みだった。ユーザー名を教えてくれたら絶対フォローするレベルなんだが、それだけは絶対に教えてくれない。探すのも許可してくれない。

 ガチで描いたやつも見せて欲しいと言ったら、「杏太郎が十八歳になったらね」との事。

 いや、どんなの描いてんだよ……。


「さんきゅ。母さん自分の部屋でやるんだろ? もうリビングの電気消す?」

「そうね。お願い。あ、でもキッチンはまだ消さないで。茶碗洗ったら始めるつもりだから。それと、食べたらちゃんと歯磨きしてから寝なさいよ?」

「おっけ。じゃあとりあえずおやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 俺はリビングの電気だけ消して自分の部屋に行くと、パンの耳を齧りながらスマホを手に取った。


「さて……」


 まずは深呼吸。そして気合いを入れて、通知二十三件と表示されたメッセージアプリをタップした。


「おぉう……まじか」


 そのほとんどが時雨から届いたメッセージ。内容を一部抜粋してみる。


『師匠。斬撃と突き技、どっちが好きですか?』

『漢字で重力って書いてグラビティって読むのはどう思いますか?』

『師匠。サラシって思ったよりも苦しいです』

『訂正します。慣れると胸が揺れなくて、とても良いです』

『漫画などでよく見る黒魔術の本ってどこにあるのでしょうか?』


 こんな感じだ。非常にどうでもいい。後は自分で考えた技名がひたすら送られてきている。

 その一つ一つが俺の黒歴史を刺激してくるので、口から魂が抜けそうだ。ホントもう勘弁して……ん?


「なんだこりゃ」


 画面をスクロールしていると、一つだけ本文の無いものがあった。これも差し出し人は時雨。気になってタップするとそこには──


「んあっ!?」


 スマホの画面いっぱいに表示されたのは、少し上から撮られた時雨の自撮り。ベッドの上らしき場所でペタンと座っている。

 まだそれだけならいい。問題は格好だ。

 時雨の姿は、パジャマらしきショートパンツと素肌にサラシ。それだけ。

 上から撮ってるおかげで、サラシに押し潰されて今にもはみ出そうな胸がガッツリ見える。谷間もしっかり見える。

 なんだこれは。餅か? マシュマロか? いや、おっぱいだ!


 …………ってなんでだよっ!

 今日初めて話したんだぞ! なんでこんな画像を送ってくる!?

 嬉しいか嬉しくないかで言ったら嬉しいけども! 即保存したけれどもっ!


 そんなことを考えながら一人頭を抱えていると、新着メッセージの通知が来る。

 まさか……いや、まさかな……。

 とりあえずタップ。


『師匠、やっと見てくれましたね。ずっと画面見てたら、今既読が付いたので分かりました』


 まさかでした。

 しかもずっとっていつからだよ。

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