第26話 ブルンプルンダンス

[え、ずっとっていつから?]


 俺は恐る恐る聞いてみる。これで○時間とか言われたら冷や汗ドバドバもんだ。


[嘘です。今、たまたま開いただけです。たまたまです]


 二回言うな。夜だぞ。寝れなくなっちゃうだろうが。


[嘘か〜]

[はい。ところで師匠。私のサラシ姿はどうでしたか? 強そうでしたか?]


 強そうとは?

 まぁ強いか弱いかと言えば、ほぼ最強に近いような気はするけども。

 まぁ、ラノベとかだとチョロインっぽいけど。


 そう思いながらもう一度さっきの写真を見る。

 そしてダブルタップ。人差し指と親指を拡げて更にズーム。うん、最強だ。

 ふむ、谷間の所にホクロがあるのか。これはなんかそそられるものが……ってちがぁぁぁぁう!

 俺はズームした場所を他の場所に移す。そこで見覚えのあるモノを見つけた。毎週日曜日の朝、姉さんと一緒に見てる物理最強変身少女のテレビアニメ。その変身後の服によく似ているモノを。


 どうしよう。めちゃくちゃ気になる。聞いてみるか? いやでも……


[ちょっと質問。送って来た写真の隅に写ってる服ってもしかしてモモピュアの?]


 聞いてしまった。だって気になるんだよ。俺、モモピュア好きなんだよ! 姉さんと一緒に泣いたんだよ!


[はい、そうです。これはモモピュアのモモピュアクイーン滅魂必殺唯我独尊モードの衣装です。師匠も好きなのですか? 市販のものでは特に胸のサイズが合わないので自分で作りました。主題歌はもちろん、エンディングのダンスもマスターしています]


 そりゃそうだよな! 合うわけないもんな! 見れば分かるさ! にしてもダンスまでとは……。これはガチ勢だな。俺は所詮テレビで見てるだけのにわか。下手に語らない方がいいか。とりあえず褒めておけば間違いはないだろう。


[手作りの衣装とかすごいな。あのモードは装飾が沢山あって大変だったんじゃないのか? ってことは、時雨は手先器用なんだな。それにあのダンスも覚えたってことは相当好きなんだな。俺には踊れないや]


 よし、これでいいだろう。もし、時雨が承認欲求を持っていたとしたら、きっと満たされただろう。


 ──よし、返事来ないな。満足してくれたか。これでやっと澤盛さんへ送る文章を考える事が出来る。せっかく知り合いになったんだし、仲良くなりたいからな。

 長すぎても短すぎてもだめだよな? う〜ん、むつかしい……。

 とりあえず世間話でもすればいいのか? 今日あった出来事でも話題にしてみるとか? ……いや、ダメだな。色々濃すぎる。


 悩んで悩んで数分経った時、時雨から来ないと思っていた返事が返ってきた。

 しかも本文無し。

 こ、これはもしかしてあの衣装を着たやつが送られてきたのか!? いや、流石にそれはないか。せめて衣装だけってパターンだろう。

 はっはっは! さすがに妄想がすぎるぞ俺。

 さて、ちゃんと見てみるか。


『〜〜〜〜♪』


 ………………。


 まさかの動画。モモピュアの衣装を着た時雨がエンディングを、曲に合わせて口パクで歌いながらキレッキレで踊っている。

 だが顔は真顔。可愛い決めポーズの時も真顔。

 豊かなのは、バルンバルン揺れる胸だけだった。





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