第21話 闇堕ちですか? 触りますか?
澤盛さんからのメッセージに返信する為、俺は指を高速で動かす。
『ちゃんと届きました! 大丈夫です!』
送信! 届け! 何の変哲もない普通の内容!
話題を振る? そんなの出来るかぁ! 何を話したらいいかなんてわからないんだよ。
「師匠は文字の入力早いですね。私は苦手なのです……」
「ん? あぁ、こんなん慣れだよ慣れ」
「慣れ……ですか? そういえば師匠はスマホに何も装飾してないのですね」
装飾? カバーのことか? いや、欲しいとは思ってるんだけど、なんかいつも買うタイミング逃すんだよな。他のものを買ってそっちを忘れたりさ。
「そのうち買おうとは思ってるんだけどな。時雨は?」
「私は一応装備させてます。こちらですね」
そう言って時雨が鞄から出したモノ。手のひら程の大きさのスマホ。そしてそのスマホから左側にだけ伸びてる黒い翼。
「やはり、翼と言ったら片翼が基本だと思うのです」
もうやだこの子。なんでこんなに拗らせてるんだよ……。
ブブッ
おっ! 返事来たみたいだ。さて、あんな返しようがない内容になんて返ってきたかな?
『良かったぁ。今日は学校お休みだよね? 日野君は、もしかして今起きたとかなのかな?』
『休みですね。けど用事があって学校に来たら、知り合いが練習試合だっていうのでそれを見に来てます』
『そうなんだ! 私もね、今大学のサークルの集まりで集まってたの。ちなみにテニスだよ』
澤盛さんのテニスウェア姿……見たい。
『おお! 丁度俺が今見に来てる練習試合もテニスなんですよ。澤盛さんのウェア姿、きっと可愛いんでしょうね』
ん? 返事が止まった? 遠回しに見たいって思われそうな文は不味かったかな?
っと、そろそろ試合始まるか。約束したし、ちゃんと見ないとな。
というか、あのサングラスの子顔押さえて足バタバタしながら何してんだ? 周りの人もちょっと顔引き攣ってるぞ。
「師匠、師匠のお友達がコートに入りましたよ」
「みたいだな。体小さいからダブルスかと思ったけどシングルか。体力もつかな……」
が、そんな心配は無駄だった。
乃々華はスカートを翻しながら縦横無尽にコート内を駆け回り、アンスコをチラチラさせながら普段見ることの無い真剣な顔。それでいて鬼気迫る表情で試合を制した。別に尻しか見てない訳じゃないぞ?
しかもなんだ最後の。相手からの左端に打たれた球。右側にいた乃々華には絶対届かないと思ったのに、ラケット持ち替えて返しやがった。すげぇじゃん。
「師匠、勝ちましたね」
「すげぇな。こりゃあ、ちゃんと約束守らないとだなぁ……」
「目で追うのがやっとでした。あれが必殺のスイッチングバースト……」
変な名前をつけるな。
ここでお互い休憩に入ったのか、それぞれのベンチに集まってドリンクを飲んだりしている。
そのタイミングで澤盛さんからの返事が来た。
『あ、テニスの試合なんだね。もしかして時々一緒にお店に来てる子とかかな? 一人で見に行ってるの? 私のウェア姿は……機会があったら……かな?』
『いえ、そいつとは違いますね。幼なじみ? の女子です。ホントはすぐ帰りたかったんですけど、頼まれてしょうがなくって感じですね。一人で見るつもりだったんですけど、何故か先輩も一緒に来るって言うので一緒に見てます。機会……オープンキャンパスとかに行けば見れたりして』
『日野君って……もしかしてモテる? あ、来る時は絶対教えて! 絶対の絶対!』
モテたら苦労しないわ!
絶対教えてか……。これは……どっちだ? 見に来ることを期待しているのか、会わないように逃げるのか……。う〜む。とりあえずソレを聞くのは怖いから触れないでおこう。
『モテるわけないじゃないすか……。モテたらUMA扱いなんてしないですよ……』
『あ、なんかゴメン』
謝られたァァァ!?
『さっきのメッセ無し! ゴメンじゃなくて、日野君優しいからモテそうだな? って思ったの! だから!』
フォローされたァァァ!!
優しいだけじゃモテないんだよぉぉぉ!
あ、これダメだ。今までこんな事を言ってくれる子はみんな他に好きな人がいたんだ……。
きっと澤盛さん、俺の事なんて弟感覚なんだ……ふへへ。
「師匠、顔が闇堕ちみたいになってます。これは私が体を張って闇堕ち回避イベントですか? 大丈夫ですか? おっぱい触りますか?」
「触るかァァ!! 闇堕ち顔ってどんなだよ!? あと、女の子が簡単におっ……おっ……」
「おっぱいですか?」
「それ言うなっ!」
疲れる。まじで。
あ、休憩終わったっぽいな。そっちに集中しよう。精神衛生的にもそのほうがいい。
ん? 乃々華のやつ、今度はダブルスにも出るのか。しかもパートナーはあのイケ歯野郎じゃん。いいぞいいぞ! ラブコメ見てるみたいだぞ!
──あ、負けた。あのイケ歯ダメじゃん。腰も引けてるし内股だし。立ち姿だけイケメンじゃん。ガッカリだよ。そして乃々華も見えないように溜息吐くな……ってあれ? 好きなんじゃないのか? まぁ、好きでも溜息くらいはするのか? 俺には経験がないからわからないけど。
そして、最後にお互いのエースらしき二人が試合をして、今日の練習試合は終わった。久鳴谷学園の選手達は後片付けをした後、全員で礼をすると校門から出ていく。
乃々華達はそのまま解散みたいで、一人、また一人と帰っていき、乃々華はそれを見送って最後まで残っていた。イケ歯に何か誘われてるみたいだったけど、行かなくて良かったのか? 別に俺となんていつでもいいだろうに。まぁ、ちょっと高いアイスでも奢ってやるか。
「じゃあ時雨、俺はアイツと帰るから」
「わかりました。では最後に連絡先を聞いてもいいでしょうか?」
「それくらいなら……まぁいいか」
「…………はい、登録終わりました。ありがとうございます」
時雨はそう言って軽く頭を下げると、校舎の方へと歩いていった。
それと同時に、テニスウェアからジャージに着替えた乃々華が近づいてくる。
「よっ、おつかれ。凄かったじゃん」
「……ありがと」
ん? なんでそんなにムスッとしてんだ?
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