第38話 恥ずかしすぎる所を見られた二人
唇を重ねて一体何秒ほど経ったのかはわからない。離すタイミングもわからない。
だからなんとなく今かな? ってところで離そうとした時、
「ほらっ! 聖美がラッコと睨み合ってたから二人を見失っちゃったじゃん!」
「だって〜? あのラッコ、割った貝をきよに向かって投げてきたんだよ〜? 許せないよねぇ〜?」
「「(!?)」」
突然、二人組の女の子が俺達の前に現れた。
「「あ」」
しかもキスの最中に。
……やっべ。そういえばここ水族館なんだよな。その事がすっかり頭から抜けてた〜。そりゃ人来るわ。なるほど。これが恋は盲目ってやつか? 違うか。
まぁそれはさておき、俺達はすぐに唇を離して立ち上がる。
さすがに恥ずかしすぎるから、無視してさっさと移動をしようとしたけど、海琴さんの様子がどこかおかしい。
目を大きく開いて顔も真っ赤になり、ひどく狼狽えてるように見える。
「海琴さん?」
「「海琴さん!?」」
俺は海琴さんを呼んだのに、何故か目の前の二人が反応して驚く。なんでだよ。
「解説の聖美さん、ちょっとどう思います? さっきのキスといい名前呼びといい」
「そうですね実況の千歌さん。きよ達が見ていない僅かな時間で何かあったのは確実でしょうね」
な、なんだこの二人? もしかして海琴さんの知り合いか?
「き、杏太郎くん! は、はやく行こっ!」
「「杏太郎くん!?」」
またハモった。なんなんだよ!!
知らない二人にいきなり名前を呼ばれて戸惑っていると、海琴さんが俺の手を握ってその場から逃げ出そうとする。
「海琴〜」
「みこちゃ〜ん」
「「待ちなさい」」
しかし逃げられない!
後ろから伸びてきた二本の手は海琴さんの肩をしっかりと掴み、捕らえてしまった。
「は〜な〜し〜て〜! なんでちーちゃんもきーちゃんもココにいるの!? もうやだぁ〜! 見られたぁ〜! バカぁ〜!」
「ごめんね〜? 離すのは無理かな〜?」
「ごめん海琴。こればっかりは放っておけないのよ」
「絶対見に来ないって言ってたよね!?」
「もちろん見に来てないわよ? たまたま聖美と偶然駅で会ってなんとなく水族館に行く事になっただけよ? そうよね? 聖美」
「きよは朝弱いのにおもしろそうだから頑張って早起きして、すぐに千歌の家に行って叩き起して駅の近くで待ち伏せしてたなんてことは、ないよ〜?」
「ちょっ!? 聖美!?」
「きーちゃん!?」
海琴さんはまるで子供のようにジタバタしていて、とてもじゃないけど歳上には見えない。
海琴さんを後ろから羽交い締めにして胸を強調してくれているギャルっぽい子は、まぁ大学生に見えなくもない。その隣でニコニコしているゴスロリ巨乳っ子は怪しいけど。てかまじでデッカ。時雨以上か? っていかんいかん。俺には海琴さんというカノジョが出来たばかりなんだ。他の女の子をそんな目で見てはいけない。
それにしても……会話を聞いてる感じでは友達っぽいけど、友達……なのか? 妹とか親戚とかじゃなくて?
というか……さっきから俺、蚊帳の外なんだけど……。
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