「さよなら」を抱きしめて
あの日の駅で君と別れた。
ホームに滑り込んできた電車が連れてきた風。
君の髪が躍った。
「さよなら」 そう言って手を挙げる君。
電車に片足をかけると
斜めに振りむいて
もう一度手を挙げた。
俺も手を挙げて応えた。
あれからどれくらい経ったのか。
君はあの日の笑顔のまま
年も取らずに心の中にいる。
あの日の「さよなら」は
こんな気持ちで思い出すための言葉じゃなかったはずなのに。
今、君がそばにいたら
あの日のさよならが話題になるだろうか
今、君がそばにいたら
俺は振り返らないだろうか
今、君がそばにいたら
君を愛し続けることができただろうか
あの日から
俺が抱きしめることができたのは
最後の「さよなら」だけ。
それさえ胸を締め付ける
心に刺さったとげのように。
あふれ出す思いは
ただの”無いものねだり”
だけど信じている。
これが誰かを思う気持ち。
好きだという気持ち。
愛してると言うには子供過ぎた。
初めての気持ちに
踊らされた。
君を奪い、奪い。
俺は君に何を与えられただろう。
だから
あの日の「さよなら」を抱きしめて
年をとればいい。
ずっと変わらない心にいる君を好きでいる。
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