第231話 皇帝陛下のテミスさん
一度ステータスを開いて、現状を確認。
【名前】アルト 【Lv】59→63 【存在力】☆☆
【職業】工作員 【天賦】創造 【Pt】0
【筋力】944→1049 【体力】661→712
【敏捷】472→521 【魔力】3776→3909
【精神力】3304→2644 【知力】1694→1812
【パッシブ】
・身体操作60/100 ・体力回復58/100
・魔力操作76/100 ・魔力回復70/100
・剣術53/100 ・体術40/100
・気配遮断27/100 ・気配察知53/100
・回避55/100 ・空腹耐性64/100
・重耐性59/100 ・工作77/100
・並列思考5/100
【アクティブ】
・熱魔術51/100 ・水魔術50/100
・風魔術49/100 ・土魔術49/100
・忍び足16/100 ・解体7/100
・鑑定 31/100
【天賦スキル】
・グレイブLv4 ・ハックLv4
・マインLv4 ・格差耐性
・即死耐性
やはり龍鱗の迷宮の魔物は経験が美味い。たった1日でかなりレベルが上がっている。
ステータス画面をスワイプして、現状を目に焼き付ける。
後回しにしておけば、またいつ怒鳴り込まれるかわからない。
アルトは宝具を起動してテミスに思念を飛ばした。
『もしもし、皇帝テミスさんのでしょうか? こちら危険因子のアルトです』
『おう、久しぶりだな』
思念を飛ばしてから即座に皇帝が反応した。
かなり離れているが、タイムラグがほとんどない。
さすがは宝具だ。
『すみません。実は定期連絡なんですが』
『おお。そういえばいまお前はどこにいるんだ?』
『日那に居ます』
『日那ってぇと……田舎の島国か。あそこは国交がねぇからいまいち内情がわからねぇんだよな。後方支援が出来ねぇから大切な密偵を潜り込ませられねぇし』
『そうだったんですね』
なるほど。バックアップなしでは密偵を送り込まないのか。
ずいぶんと部下思いな皇帝だ。
『実は良い報告がありまして、この日那州国に醤油と味噌。それに納豆がありますよ』
『マジか?』
『はい。マジです』
『…………おい、いいかアルト。これは重要な作戦だ。テメェはいますぐ海路を開け』
『はい。……はいぃ?』
テミスの真剣な声につい頷いたが、その言葉の意味を考えて首を傾げる。
海路を開く?
『すべての醤油と味噌、納豆を買い占めろ。アヌトリア東の港は開けておく。金貨1万枚あれば足りるか?』
『ちょ、ちょっと待ってください! 一体、なんの話ですか?』
『交易の話だよ!! 貿易航路を繋げてアヌトリアに大量に和食を輸入すんだ。その先陣をテメェが切り開け!!』
『いやいやいや……。ボク、帝国の人間じゃないですし。そもそも外交官でもないですから!』
なんて無茶を言い出すんだ……。
貿易ルートの確保は商人や外交官の仕事。アルトが勤まるはずがない。
『なにを温いこと言ってやがんだ!! こちとらもう何十年も和食にありついてねぇんぞ!? それなのに、テメェは……テメェは……っくぅ!』
よほど和食が恋しかったのか、念話だというのにテミスの声に塩辛いものが混じっている。
皇帝という立場上、気軽に世界を旅することはできない。だからアルトにその思いの丈をぶつけたくなる気持ちは十分理解できる。
彼の思いを汲んであげたいのはやまやまだが、アルトでは力不足だ。
そもそも国交がない国と、いきなり貿易協定を結ぶなど、外交官であってもかなりの時間が必要になるだろう。
ただの一般人にそんなことは……。
……いや。そうでもないか?
アルトはしばし瞑目し、口を開いた。
『アヌトリア東の港に日那の船がいつでも入港可能な状態にしておいて頂けるんでしょうか?』
『ああ』
『では、少しだけお時間をいただけますか?』
『どれくらいだ?』
『1年か2年くらいあればもしかしたら。ただ確実ではないので、出来れば正当な手順を踏んで協定を結ばれた方が良いかと思われますが』
『国力を増強してるアヌトリアが、日那と組もうとしてみろ。他国が黙ってねぇぜ?』
『……何故ですか?』
『アヌトリア東港。そこから日那を経由してスイーリア州最南端の港からユーフォニアに攻め込むつもりだ。そう考える脳足りんがうじゃうじゃいる』
なるほど。日那を中継基地として用いることで、本来ユーフォニアに向かうために通過しなければいけないケツァムやセレネ、ミストルを素通り出来てしまうのか。
たしかに、ドワーフ工房で武具を製作し続けているアヌトリアが航路を切り開いたとなれば、他の国は脅威を覚えるだろう。
『歩みよれば他国を刺激する。だからいままで、日那には一切近づくことが出来なかったんだよ』
『そうだったんですね……。じゃあ、少しだけ待ってていただけますか? こちらからできる限りアプローチしてみますので』
『わりぃな……。国同士が近づけない以上、民間の力を頼るしかねぇ』
まさか帝国が、食のためだけに日那と手を結ぶなど考える国はいないだろう。
説明したところで、理解されることは決してない。
グローバルな地球ですら、世界と日本の食に対する温度差がありすぎたのだ。地球よりもローカルなフォルテルニアでその差が縮まるとは思えない。
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