第165話 釣り1
アヌトリア帝国を出てから、アルトたちはすぐに街道を外れた。
「どうして街道を行かないんですの? まさか木陰に連れ込んでわたくしを――」
「アンタ、本当に馬鹿だな」
「喧嘩ですの!? 乙女の貞操が危機かもしれないのに、失礼ですわね」
「心配すんな。そんな危機ねぇから」
「何故、そう言い切れますの?」
「そりゃ、何年も一緒にいたからな。あいつはレベル上げ、熟練上げしか頭にないんだよ」
「なるほど」
「そもそもアンタに貞操がピンチになるような色気なんてねぇだろ」
「キィィィィッ!!」
普通は街道を歩くが、まっすぐ突っ切ったほうがケツァムに早くたどり付くのだ。
また、街道を外れると魔物との遭遇が増える。
――自由気ままにレベリングが出来る。
これほどアルトにとって好都合な道はない。
まずは地力の確認を行う。
【名前】アルト 【Lv】45 【存在力】☆☆
【職業】工作員 【天賦】創造 【Pt】3→4
【筋力】720 【体力】504
【敏捷】360 【魔力】2880
【精神力】2520 【知力】1292
【パッシブ】
・身体操作50/100 ・体力回復50/100
・魔力操作70/100 ・魔力回復63/100
・剣術49/100 ・体術32/100
・気配遮断21/100 ・気配察知43/100
・回避51/100 ・空腹耐性56/100
・重耐性51/100 ・工作65→68/100
【アクティブ】
・熱魔術47/100 ・水魔術46/100
・風魔術44/100 ・土魔術45/100
・忍び足16/100 ・解体7/100
・鑑定 31/100
【天賦スキル】
・グレイブLv4 ・ハックLv3
・格差耐性
エルフの〈刻印〉を習得したおかげか、工作スキルの練度が上がっていた。
また、スキルポイントが1つ増加している。
「なんで増えたんだろう?」
エルフのことか、ドワーフのことか、はたまた皇帝とつながったことか……。
いずれにせよ、ポイントの増加はありがたい。
「ひとまずこのへんで、天賦に振っておくかな」
現状の天賦スキルは、ワイバーンを倒すには十分なレベルだ。
だが今後、天賦スキルが通じにくい相手が現われないとも限らない。
なのでアルトは現状のポイントを、すべて天賦に割り振った。
≫【Pt】4→0
≫グレイブLv4→Lv6
≫ハックLv3→Lv5
「これでよし、と」
次にやるべきは、熟練上げだ。
アヌトリアに来てから三年もの間、アルトは熟練上げに根を詰めなかった。
(マギカにずいぶん先をいかれただろうなあ)
可愛くも強き栗鼠族の戦士。
その背中を思い浮かべ、アルトは奮起する。
アルトはその場で跳躍、ステップ。体を大きく躍動させる。
地面から浮き上がった瞬間に《ハック》を使用。
四方八方にひゅんひゅん体を移動させる。
「な、なんですのあの動きは? 変態ですわ……」
「オレが知らねぇ間に師匠、どんだけ変態度が増してんだ!?」
地面から足が離れると隙が生まれる。
なのでそれをどうにかしようと試したところ、《ハック》で空中移動出来るようになった。
一発で上手くいったのは、スキルレベルを上げたためか。
(おー、これはかなり使えそうだ!)
「動きが……」
「ど変態だな」
熟練上げに夢中になって、アルトはぐんぐん進んでいく。
その間、何故か魔物は1匹も現れなかった。
帝国兵がちゃんと仕事をしているおかげで、この辺りの魔物が少ないようだ。
(戦闘でも、いろいろ試したいことがあったんだけどなあ……)
「魔物が怯えたように逃げていきますわ……」
「魔物も、変態にはおびえるんだな……」
日が高くなった頃、川辺で休憩を取った。
ここまでアルトたちはかなりのハイペースで移動してきた。この分だと3・4日の間にはケツァムに到達できるかもしれない。
鞄から取り出したタオルで汗をぬぐい、川に近づいた。
川は流れが緩やかだが、そこそこ水量がある。目を凝らせば中に魚の姿が確認できる。
「昼ご飯は魚にしようかな」
時間を少しも無駄にはしない。アルトは思い立つとすぐに実行に移る。
木の枝を払い、丁度良いサイズに加工。タオルから糸を1本だけ抜き取り、〈刻印〉で強化する。
《工作》を用いて、道ばたに落ちている石から僅かな鉄を抜き出し、針にする。石を拾い上げたときに地面から顔を出したミミズさんを針に突き刺した。
「師匠、今度はなんの熟練上げしてんだ?」
「僕の行動のすべてが熟練上げなわけじゃないんですよ?」
「嘘だろっ!?」
「なんでそこで驚くんですか。嘘じゃないですって」
「どうせ釣りスキルでも取得するつもりなんだろ?」
「それ取ってどうするんですか?」
「ん? ……魔物を呼び寄せる?」
「ならスキルを取る意味ありませんね。モブ男さんがいれば十分です」
「おおよ! ……って、ん? それ褒めてんのか?」
「一応」
彼の強力な魔物釣り(ひきよせ)スキルは、もはや神の域だ。
だからといって、羨ましいとも真似したいとも思わないが。
「アルトのそれは……なんの遊びですの?」
「食材確保ですよ。シトリーさん、釣りはご存じですか?」
「つり、ですか?」
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