第114話 間章 ウェイク・ミー・アップ
【告知】
コミカライズ版『生き返った冒険者のクエスト攻略生活』
漫画:冥茶 原作:萩鵜アキ キャラクター原案:ひづきみや
ヤングエースUPにて8月18日(水)配信スタートです!
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あら、あんたどっから来たんだい?
ふぅん、そんな身なりで長旅ねぇ。え? あたしと比べるなって? はぁーっはっはっは! 確かにそりゃそうだ。ドワーフの女と比べるのは可哀想だったね。
見た目通り、ドワーフ族の女は強いからねぇ。
昔はドワーフの男が一番強くて、女は弱かったんだけどねえ、近年草食系ドワーフが増えてきてるだろ? こりゃまずいってんで、女が強くなっちまったんだよ。
だってほら、好きな相手はいつまでたってもこっちに手を出してこないだろ? だからイライラとして、つい襲っちまうのさ。
まあ人間からすれば信じられないかもしれないさね。けど、割とそれが上手くいくんだよ。
昔は男の胃袋を掴めばお袋になれた、なぁんて話があるけど、今じゃ男だって料理くらいするだろ? そうなると、料理の得意な男にゃ、女はなにやったって太刀打ちできない。
だったら、男より腕っ節が強くなるしかないだろ?
そんなわけで、あたしは腕力で落とした男と、夫婦になったわけだ。
あたしは家で仕事をして、ダンナは火事場で仕事をしてる。
家の仕事ってのは、簡単に言えば掃除洗濯炊事だね。うちには残念ながら子どもがいないから、子育ての仕事だけは出来なかったねぇ……。
ああ、あたしの話ばっかりでごめんよ。
で? どんな用だい?
……ああ、あの子かい。
あれはねぇ、たまたま拾ってきたんだよ。ルミネに落ちて……ああ、ルミネってのはエルフの街の名前だよ。そこに落ちて、ふらふらしてた所を捕まえたのさ。
ぼろぼろで、なんだか廃人みたいだから少し預かろうってなってねぇ。
腕が太いから勘違いされやすいけどね、あたしらドワーフは慈悲深いんだよ。
腹を空かせた子どもが泣いてりゃ飯を食わせるし、喧嘩をしてりゃ仲裁する。冷たいって勘違いされてるようだけど、そりゃ男だけさね。
あいつらはプライドが高い奴こそ本物の男だと思ってる節があるからねぇ。そんな態度を取ったら、顔の形を変えてやるのも女の仕事さね。
ああ、それであの子だね。
初めはもう駄目かと思ったよ。あまりに貧弱で、気迫がないんだよ。目が虚ろでさ。けどねぇ、こちらが優しく接すれば、同じように返してくれる。こちらが厳しく接すれば、厳しく返ってくる。
強く叩けば大きく響き、弱く叩けば小さく響く感じかね。
ただ……その、ちょっとアレなところがあってね。
いやなに、あれは集中力っていうのかい? 一度なにか考え事を始めると、あたしが読んでもダンナが引きずっても、まぁるで反応しなくなるのさ。
急に黙り込んだと思ったら突然光の球を生み出して家中を埋めちまう。
初めは心臓が飛び出すかと思ったねぇ。けど、まぁるで害がないじゃないか。
ただすこぉし光の球が奇妙な動きをするだけで。
いや、少しじゃないね。
はぁーっはっは! あんたも言うねぇ。
その通り、あの子は変態かもしれないねぇ。それもとびきり無害な変態だ。
そうそう話を戻すけど、とにかくその当時はよくわからない子だったんだ。けど、情に絆(ほだ)されちまってね、うちで引き取ることにしたんだよ。
子どもに恵まれなかったし。折角だから、引き取ろうってことになったんだ。
いつまでって時期は決めなかったさね。
もしあたしらでダメなら、教会の孤児院あたりに入れるつもりだったよ。
ある日、なんのきっかけかは知らないんだけどね、あの子が号泣したんだ。
それはもう、あたしですら手に負えないほど泣いてたねぇ。
たぶん、すごく辛いことがあったんだろうね。だから、ああなっちまったんだ。
人は誰しもが魂の器を持っている。人生はその器に見合った出来事が起る。けどね、時々神様ってのは悪戯をして、その人を試すのさ。
次の段階に進めるか、それともそのまま乗り越えられずに終わるか。
次の段階に進んでも、またいずれ酷い目に遭う。そのまま停滞しても、前と同じことが、乗り越えられるまでやってくる。
どこまで行っても、辛い未来はなくならない。
ほんと、神様ってのは悪戯好きなんだよ。
たぶん、あの子の魂は何度も試練を乗り越えながら、徐々に成長するはずだったんだ。けど、全部の試練が一気に全部押し寄せちまった。
だから、あの子の器が耐えきれずに壊れちまったんだ。
それほど神様に期待をされてたのか、それとも神様に嫌われてたのか……。あたしゃ神様じゃないから判らないけどねぇ。
ただ……そうさね、あたしが神様だったなら、たぶん、前者なんだろうねぇ。いや、そうであってほしいって願いさね。
とてもじゃないけど、悪い子には見えないんだよ。
雰囲気は穏やかで、口もろくに聞けないのに、黙ってるだけで癒やされるんだ。
ああ、これはダンナには内緒だよ? あんな髭ヅラでも嫉妬深いんだ。ああ女々しいったらないねぇ!
それでその子が泣き止んだ日から、口がきけるようになったんだよ。
初めて口にした言葉が「ありがとう」ってなもんだから、あたしゃ号泣しちまってねぇ……。
ああ、やだやだ。泣けてきちゃったよ。
それで、あんたはあの子とどういう関係なんだい?
ん? ただの仲間?
…………そうかい。ついに知り合いが探しに来てくれたかい。
ほんと、良かったよぉ。
いやいや、あたしに構わないで、さっさと連れていきな。
だってあんた、あの子のことが大切なんだろ?
ああ、あの子なら仕事でルミネに行ってるみたいだけど。そろそろ帰って来るんじゃないかねぇ?
おいおい、そこまで緊張するもんじゃないよ。
いままで通り、接してやんな。
あの子だって辛かったんだ。
あんたをないがしろにしたわけじゃないんだから、責めないでやってくれよ。
ん? なんで判るかって?
そりゃ、こんなナリでもあたしゃ女だからだよ!
ほら、行け行け!
言葉が出なかったら、いっぱつぶち込んでやんな!!
それくらい、あの子なら赦してくれるさね。
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執筆活動が大変忙しく、最強の底辺魔術士の続きに取りかかる時間が取れずにいます。
現時点で本作のストック文字数は60~70万字ほどありますが、改稿に手が回らないため、更新はしばらくお休みいたします。
大変申し訳ありませんが、何卒ご容赦の程を宜しくお願いいたします。
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