31 生まれ:Birth
それに
それを知ってか、
「
「なんとかな。やられたわけじゃねえンだが、慣れないもんぶん回しちまったせいで、腕がズタズタだなこりゃ」
「
『大丈夫よ』
その間、
「マキシ姉さん……で、良いのかな?」
「ボクの記憶も見たの?」
「ああ。朧げだし、オレの記憶とは食い違っているから、よくわからないというのが本音だけど……オレの為に無理をしてくれたのは分かったよ……ありがとう」
ぎこちなく言葉を交わす二人を尻目に、
「
「ん? ああ、予備がある。どうぞ」
不思議な光景だった。
先ほどまで鋼すらやすやす切り裂く刃を振るって、互いに殺し合っていた人間が並んで仲良くタバコを吸っている。
煙を吐きながら
「口にあわねえかい?」
怒るでもなく
「紙のタバコは昔、吸っていたけれど……電子タバコの味は慣れないわね……
「味を自分の好みに巧く仕立てれば、そう悪いもンじゃねえさ」
そうは言いながらも、吸い込んだ煙を楽しむようにゆっくりと吐いた。
結局、酒やタバコなどでは、
妙な緊張と、妙な弛緩を保ったまま、破壊の後の生々しい山の中で四人の影がゆっくりと伸びていた。
空にはいつの間にやら、夕闇が迫っている。
逢魔が時。
そんな禍禍しい時間に、憑き物が落ちたように木枯らしが吹いた。
「それで陣笠の旦那でも、アンタでも良いンだがな……なンで俺は、社長と一服やってんだ? 会社の休憩室か? ここは」
カラスの鳴き声を背景に、誰も聞かないので
そうして「私が話さないといけないのだったな」とでも言う様に、軽く、タバコを持つ手をかざしてから話始めた。
「M4A1――いや、ここはケイの意思を尊重してマキシと呼ぼうか――彼女のデーモンが【
煙を吐きながら、残念そうに
「こっちはあんたを殺そうにも、そう簡単にはいかねえし。陣笠の旦那が雪の花で守ってくれて、ようやく
うっかり右肩を持ち上げられたものだから、右腕に激痛が走り、ドローンで応急処置をしていた
「オレの中に【
暴威の戦場を、停滞した空気に作り替えた張本人である
「ああ。その身体、M4X2を用いて、
「どういうことです?」
「【
タバコを持った指で、
「デーモンAIはあくまで、自己の変質と進化に特化したAIだったということね。
「だけど【
「ああ。だが、それはあくまでストレージ内に発生した
「それで……オレが作られたわけですか」
「そういえばさっき、そこの
「生みの親という意味では、母かもしれないですね。俺の父母の記憶は二人ともスピンドルの研究者ってだけです」
生みの親というには少し遠いな。と、
そんな反応を見て、
あるいはデーモンとはいえ、神耶ケイとの間に産まれたモノを、自らの手で殺そうとしていたことを気に病んでいたのかもしれない。
「いずれにせよ、神耶ケイと私の、二人分の
「――君は『生まれてきた』んだ」
その腕は確かに
【
母・
「いつの日か“お前はヒトではない”と存在を完全に否定されたとしても、オレはオレだと心の形を保てるように……か……」
「彼女は昔からそう……いつも少し先を見ている。
懐かしそうに、優しい顔でそう言う。
それだけに
晴らしようのない憎悪。
その為に
そう自問するが、答えは返ってこない。
少なくとも
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