23 二つ名:Notorious
「
「なんとか
自分の身が危ないというのに、
彼の
朝比奈はキャットウォークを走りながら、積み挙げられたコンテナの
「オレは
「無茶は止せよ陣笠の。あンたが身体張る場所でもねえだろ」
多脚戦車の主砲――
月夜に蒼い閃光が昇る。
対人用に搭載された機銃では、
しかし対人目標相手に、対物砲のお化けを使うとは。相手は相当焦れているらしい。
「
現場が遠い。
モニター車が露見するのを恐れてというよりも、
「駄目かい? 無理を言ってウチのバックアップをして貰ったんだ。無下にしたら筋が通らンのよ」
そうこう言う間にも
「有難い話ですけどね……それじゃあ
ようやく工場の外壁へたどり着く。
フェンスではなくコンクリの壁だ。工場が建設されたその時から、
想像するのは簡単だが、対処するのは難儀だ。
その直接対応は下部組織に廻り、巡り巡る内に予算は消え、露見するほどではなかった問題は報告書の闇に沈んでいったのだろう。
そうして積もったツケを払わされているのが、このくだらない
ニシカミ
――でも……
自問自答したところで、答えはなかった。
「
まるで他人事のように言う。
「
コンテナの上を飛んで走る。
「ン? まあ出来なくはないが……おっと」
――キィィィンという、つんざく様な
蒼い閃光が再び、工場の外壁から生えているのが見える。
明日のアングラ・ニュース板は、工場の爆発事故の陰で走った蒼い光の正体で持ちきりになりそうだ。
「――しゃあねえな陣笠の旦那は。組員を北側に逃がしてる。南側に廻れるか?」
そう聞いて
この工場は
搬入用のクレーンには、荷揚げ途中のコンテナがぶら下がっている。
「使えるな――南東側、搬入港のクレーンの下がいいです。やってください」
そう言って指定座標を送る。
返事が返ってくるまで一瞬の間があり、その理由を示すように
「……ふう……わかったよ。タイミングなンかは大丈夫なンか?」
「
「何とか、やってみ――おいおい、まてまて」
対人機銃の銃弾を
可燃物に引火したのか、工場の一画が爆発して爆ぜ飛んだ。
「
「冗談じゃねえ、なんで引火性の爆薬まで置いてあンだよこの工場は。税関は仕事してないンか!」
肝を冷やしたが、どうやら無事なようだった。
ここいち危うかったのか、
「……無事みたいだけど、急がないと
前方に搬入用の巨大なクレーンが見えてくる。
悠長に昇降機を使っている暇などない。
垂直の巨大な鉄骨に足を掛けると、そこを【
巨大なクレーンが吊り下げたままのコンテナに乗り移り、工場を見渡した。
都合よく、建屋の搬入口が港側に付いている。
クロムウェア・チップから送られてくる情報を
「よし、いいぞ
「
搬入口のシャッターが十文字に焼き切られ、それを蹴り飛ばして
追って掃射された機銃弾を、トラックコンテナ用の段差を塹壕にしてやり過ごす姿が直接見えた。
だがそこから、クレーンの基部までは遮蔽物がない。
「さて、ここからが問題なンよな」
内蔵のクロムウェア・チップに【
強化された膂力で投げつけられた
「
意図を即座に理解した朝比奈は、雪花の陰へ滑り込む。
一瞬遅れて機銃が雪花を撃つが、
続けて、六尺棒を投擲。次の雪花を咲かす。
「なンとか、凌ぎ切ったか?」
「朝比奈さん、後ろッ!」
みれば、機銃で貫通出来ないと思った
「――間に合えッ!」
最後の一本の
――ギィィィンッと
砲塔の目の前に現れた【
一瞬遅れて、衝撃が
「さて……予定ポイントまで到着したが……」
そういう朝比奈は、楯になるものもなく無防備な状態。
至近で
「ずいぶん走らされたな、まったく……これ以上の荒事はごめんだぜ、陣笠の旦那」
――ガゴォォォン
丁度、電子タバコを咥えた辺りで、降ってきたのは
防壁破り《パルバライザー》を流し込まれて帯電したコンテナの角が上部に突き刺さり、そのまま押しつぶしたところで、ようやく
「スーパー
クックと
「なんですかそれ、止めてくださいよ、ダサいなぁ……」
「なら“
そう言って
「それ広めたら、オレも
「そいつもなかなかヒデえ二つ名だ」
そう言って二人はグッタリと多脚戦車の残骸にもたれ掛り、また笑った。
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