第13話 女同士の愛は諸刃の刃 ACT 3

「はぁ―、りんごに話したら、なんだかスッキリしたわ」


「そ、そうですか……」

「で、ここは私とあなたの仲で相談なんだけど。美柑さんを私たちの共有物にしない?」

はぁい? 共有物って?


「何ポケッとした顔してんのよ。このままただ眺めているだけじゃもったいないでしょ。それにりんごだって従兄妹の間柄とは言え、気になっているんじゃないの? ねぇ、男嫌いのりんごちゃん」


「男嫌いって私は、実在の男が嫌なだけなの。2次元の中の様な私の理想の男が、もし、いたら別だけど……」

「だ・か・ら。美柑さんがあなたが追い求めている男性像に今一番近いんじゃないの?」

「そ、そんな事ないもん。それにみかんは従兄だし。恋愛の対象なんて考えてもいない」


「ふぅ―ん、恋愛の対象じゃないって? でも物凄く気にしているのは本当だよね」

「だから、みかんとはそんなんじゃないって。もうどうして希美は私とみかんをそんなにくっけたがってんの」


「だってぇ――――、でないと私、本当に美柑さんを好きになっちゃうかもしれないでしょ。もし、りんごが美柑さんと上手く付きあれば私はスッとその間に入っていける。美柑さんの相手がりんごなら私は許せるし、私は彼の躰があればそれでいいんだし」


「でも、もしよ、私とみかんが本格的に付き合ったら、希美ヤキモチ妬かないの? 男に私取られちゃうんだよ」


「うふふ、それはねぇ……。りんご、あなたはどうあっても、私からは離れられないて言う自信があるからよ」


な、何その自身って

「あなたの躰に今まで私が刻み込んだものはもう、男なんかとの行為じゃもの足りないはずだから。りんごは、男とのそう言う行為はこんなもん? て、思うはずよ。私が今まで作り上げて来た躰なんだからね。ねぇ、そうでしょりんご。あなたも私の躰じゃないと満足いかないんでしょ」


そっと私の肩に腕を置き、身体を引き寄せ唇を重ね合わせた。

口の中に希美の温かさが伝わる。


今まで何回も、もう数えることが出来ないくらい、私たちはキスをしてきた。それでも希美とこうして唇を重ね合わせると、胸が苦しくなって、身体が熱くなる。


「はら、もう胸がこんなにドキドキしちゃってる」

そんな事を言っても、身体が勝手に反応しているんだもん仕方がないよ。


「正直だよねぇ。この躰は。そう言う風に作ったのはこの私なんだけど」

「そんな事言わないでよ」


「でも嘘じゃないでしょ」

「……うん」


うん、嘘じゃない。もうこの躰は希美失くしては、生きていけない躰になっているのを知っている。キスをしただけなのに、もう頭の中がとろけそうになっている。躰が物凄く熱い。


「もしさぁ、りんごが男の人とこいう事をしても、ここまであなたの躰は反応しないわよ……きっと」


たぶんそうかもしれない。でも今まで、私は男の人との経験はない。

希美はあるけど……。


私の経験は。希美から訊いた話だけだ。後はBLマンガの世界が異性との経験なのだ。


実際に男の人したいとは思わない。こうして私は希美に抱かれることが私の望。

もうそれだけで十分すぎるほど満足している。


こう言う事に関してはなんだか、もう女子高生じゃない。すでに欲情に勝てない熟れたおばさん化している気がする。


だから私はもう『腐った果実』なんだ。


「我慢できなくなった?」

躰は正直だ。希美を求めているこの躰が。


この、落ちていく感じが、何処までも汚らわしく、陰湿でそれでいてうずきまくる感覚が好きなのだ。


「汗臭いよ」

「いいの。その汗も全部いただくわ」


私はこのまま、腐り朽ち果てて行く。

それでもいい。このままずるッと地面に、この腐った果実は落ちていくんだ。


「ねぇ希美、もし、私たちの関係みかんに知られたら嫌?」

「別に。私は構わないけど、美柑さんどう思うかな? もしかしたら引くんじゃない? りんごは嫌でしょ。そんな目で見られるの」


「どうかな、でもそうなればそうなったで、みかんは「そうなんだ」って言うくらいにしか思わないんじゃないかなぁ」


「そこまで美柑さんは理解ある人なの?」


「理解って言うかさ、みかん自体が女の人、女性が苦手なんだよ。あ、苦手と言うより興味がないって言った方が、適切なような気がするけどね」


「嘘、それ本当なの? もしかしてホモ?」


「あははは、たぶん違うと思うけどなぁ。でももしそうだったら、私の趣味にぴったり合うから困るんだよねぇ」


「別に困ることはないでしょ」

「確かに!」


「でもさぁ、意外。女性に興味がないなんて」

「そうだね。だからおばさんがうちに住まわせたみたいんだ」

「女に興味を持つように?」

「て、いう事なんだろうけど。それを言ったらうちは特殊だからなぁ」


「あはは、そうだね。りんごの所は物凄く特殊だと思うよ」


そうなのだ、あの母上様からして特殊と言う、概念からすでにはみ出している感が強い。それにこの私だ。こんな女二人の中に押し込まれたみかんが、不憫に感じてしまう。……自己嫌悪か。


「でもさぁ、今思い出してもなんか恥ずかしいね」

「何が?」

「何がって、りんごの部屋でやっているところ、奈々枝さんに見つかった事」


「ああ、そう言えばそんなことあったね」

「怒られるかと思ったら。「そのまま続けて!」ってガン見されたんだったよね」


「まいったなぁ。まだ覚えていたんだ希美」

「だってぇ、見られていると、あんなに感じるなんて、思いもしなかったんだもん」


そう言いながら、私の胸をぺろりと舐めた。


真っ赤な顔して……。

でも、希美はそれが忘れられないらしい。


希美の清楚な姿は表の姿。


本当は……。


いやらしい、痴女なのだ。

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