第4話
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「今日もおサボりさん?」
「苦手なんだよ、国語」
「えー、どうして?」
「答えが曖昧っていうか、ハッキリしないっていうか。そういうとこが嫌い」
「ふーん」
「だって、数学とか化学みたいな答えがハッキリしてる方がスッキリしない?」
「理系さんなんだね」
「君は文系なの?」
「うーん。英語は好きだから、文系なんじゃないかな?知らないけど」
そうなんだ。
英語、好きなんだ。
「そんなことよりさ、君は白黒つけたいタイプなの?」
「えぇっと、どういうこと?」
「うーん、そう言われると困るな」
彼女は少しだけ言葉を選んで、また喋り出す。
「良い事をしてる人は報われるべきで、悪い事をしてる人はバチが当たるべきだと思ってる、って事かな。
そう、理不尽が嫌いって事!!」
「それって当たり前の事じゃないの?」
正しい人は報われるべきだ。それに一切の異論はない。ズルしている人を称賛したいとは僕は思えない。
「私はさ、曖昧な方が好きかな。グレーの鼠色ぐらいが良いよ」
そういった君は何処か大人びていた。何処か達観しているようで、全てを知っているかのような雰囲気だった。
「意外と世界は、ずっと曖昧で出来てると思うんだよ」
「......どういう事?」
「酸素は100%だったら猛毒でしょ?」
「う、うん?」
さっき君、文系って言ってなかったっけ。
「だからさ、私は悪い事が無くなることがいいとは思えないの」
「悪い事があって良いって言いたいの?」
「うん。今からすっごい嫌な事を言うけれど、イジメとか嫌がらせとかは、実は必要なんじゃないかって思うの。
必要悪って言うのかな、それを教訓として正義が存在できるんだよ」
「難しい話だ......」
「悪い事が無くなったら良い事もなくなるって事」
「ふーん?よくわかんないけど」
少し頭がこんがらがる話だ。
でも君の大人びた言葉は、周りの大人や教師がいう白々しい言葉なんかよりも重みがあるというか、上手く表せないけれど、そんな感じがした。
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