第2話
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朝の通学中に、ふと昨日の出来事を思い出した。昨日の出会った少女は、今日もあの屋上に居るのだろうか。
そんな気から屋上を見上げる。そして、1人の少女と目があった。それがあの少女なんだとすぐに分かった。
いてもたってもいられなくて、その日の昼休み、授業が終わってすぐに屋上に向かった。
その日もハッチは開いていた。
「ん?また昨日の君かい?」
「は、はじめまして」
「ふっ、そうだね。初めまして」
「となり、失礼します」
「断りは要らないの?」
「最近、要らないって教えてもらったので」
「その人は結構大胆な人だね」
なんでこんな所に来たのか。
我ながら馬鹿みたいな話だけれど、また彼女と話したかったんだと思う。
彼女には僕を惹きつける何かがあった。
『類は友を呼ぶ』とでも言うのだろうか。何故かは分からないが、どうやら僕の脳は無意識的に彼女を気に入ったらしい。
僕はたまに、どうしようもなく魅力的だと感じる人がいる。過去にあったのは、僕のおじいちゃんだろうか。理由は今も分からないけれどとても尊敬していたし、おじいちゃんっ子と言われたぐらいには、懐いていた。
それと、彼女は同じ感覚がした。
「今日、目があったでしょ」
「そうですね」
「だから来たの?」
「ただの気まぐれです」
「君は暇なのかな?」
「親しい人は作ってこなかったので」
人と付き合いが長くなればなるほどに、その人と差が出て、見下したり、嫉妬したり、上手くいかないから。
僕は人付き合いが下手だ。
「それに今日、君人助けしてたでしょ?」
「あー......うん」
おそらく登校中にに僕がお婆さんを助けたことを言ってるのだろう。
「なんで?」
「別に横断歩道で重い荷物を持っていた人を助けただけだよ。深い意味はないけど」
「なんで、そんな事したの?」
「だから、特にはーー」
「なんでそんな損のする事するの?」
やけに突っかかってくる君。グイグイと彼女の顔が距離を近づけてくる。
名前も知らない女の子の匂いを感じて嬉しいと思うなんて、どうかしてると思うけれど。
緊張した。
「べ、別に、そこに意味はないって。ただ、僕がそうしたかっただけっていうか......です」
「......へー、理由ないんだ」
彼女はなんだか嬉しそうにそっぽを向いた。
「理由、答えてくれないんだ」
妙にむず痒い。
「理由ない人助けはダメですか?」
「良いや?私はそんな非合理的な事は出来なーって思っただけ」
彼女はぽつりとそう呟いた。
それからは僕もただ景色を眺めていた。別に昨日と特に代わり映えはしないのだけど、今日はまるで世界の傍観者にでもなった気分だった。
どこかぽかぽかしているけれど、とても冷静な気分だ。
「そろそろ、行かなきゃだ」
ポケットのスマホを確認すると、もう午後の授業が始まってしまう。
「いってらっしゃい。お互い、今日ここでは何も無かった」
「明日からは君とはまた他人。分かってます」
何も無かったけど、楽しかった。
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