「隣家の赤子」「ばぁかばぁか」
隣家の赤子
実際にあった、というより、もしかしたら現在進行系かもしれない話だ。
大学、就職と地元を離れていたが、今、私は実家で暮らしている。一戸建てである。
両隣に家があって、右隣の家の生活音がたまに聞こえることがある。
ちゃぷちゃぷという水音、入浴音であろうか、
はしゃぐような声と、赤ん坊のような声が聞こえる。
私が子供の頃から聞こえてくる音だ。
水音、はしゃぐような声に赤ん坊のような声。
20年以上前から聞こえてきた音は、
実家に戻ってきた今も聞こえている。
そして、私は隣家の赤子を見たことがない。
当時も、今も。
隣家に何がいるのかはわからない。
もしかしたら、隣の家ではなく、自分の家の話なのかもしれない。
ばぁかばぁか
大学に合格し、壁の薄いアパートで暮らすことになった。
壁が薄いといっても、住めば都。
よその生活音など次第に慣れていく。
だから、普段は他人の生活音など気にしないのだが、どうしても気になる音があった。
いや、音ではない声である。
「ばぁかばぁか」
という声が聞こえるのである。
どこから聞こえるのか、
正式な場所はわからないが、
おそらく、上の階から。
夕方から夜の時間帯に数分ほど連続して、
週に数度、ひどい時は連日聞こえてくるのである。
複数人が住めるような広さのアパートではない。
そして、多分電話でもない。
誰かに向かっていっているのではない、多分、独り言だ。
そう、信じたい。
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