第27話 瑠璃と沙夜ちゃんと……
そして放課後になって、瑠璃の予定に入っていた『仕事』、悪の魔法少女としての活動に付き合わされる結果となった。
どこからか湧き出たクロぼうの案内に従って、今日はスーパーたからやの駐車場での活劇だ。
俺、もうこのスーパーに来れないじゃん。
品が良くて商品豊富でいつも特売セールをしてくれるお店だったので重宝していたのだが。
まあ、白のスーツ姿だから知らんぷりしてれば正体はばれないか。
そういうことにしておこう。
放課後の午後五時を回ったところで、夜の食事のための買い物客でにぎわっていた。
おばさんたちが、あらあら今どきの若い子はというようなワイドショーの不倫ニュースを見るような興味と属目をもって周囲を囲んでいる。
今日のラピスは学園の部室での昼の事もあってかノリノリ。超上機嫌で快調の様子。性癖全開のエロレオタードで、俺とスキンシップをしようとして迫ってくる。
俺は、反撃してラピスを傷つける訳にも行かず逃げ惑う。
ラピスは嬉々とした様子で顔を興奮に昂ぶらせて俺を追いかけまわして……まあ、いつもの通り。割愛する。
◇◇◇◇◇◇
日が暮れて、大立ち回りを終えて肉体的にも精神的にも疲れきって家に帰ると、沙夜がお帰りなさいと優しく迎えてくれた。
今日はお兄ちゃんの大好きな豆腐ハンバーグですと、柔らかい笑みで包んでくれる。
いつもの家の、優しい空間。
沙夜は瑠璃の事や俺の変身ヒーローバイトの事に言及してこなかった。学園の部室では俺と瑠璃をくっつけようという振る舞いの沙夜。だが、瑠璃の正体や性癖に言及したり、俺のバイトを咎めたり諫めたりする言動はない。
家に帰ってくると、俺を全肯定してくれるいつもの沙夜がそこにいる。沙夜なりの気遣いが身に染みた。
沙夜の暖かな表情を見て思わず泣きそうになってしまった。
沙夜が俺と瑠璃の間を取り持とうとしているのは、俺の身を案じてくれているのだとはっきりわかる。きっぱり言い切れる。沙夜のことだろうから、俺の相手を見繕う目線も厳しいし、瑠璃はその沙夜の選考を通ったレベルの人間性なのだろう。それもわかる。
だが、いま一歩。もう一歩のところで瑠璃に踏み込めない俺がいるのも事実だった。
瑠璃の性癖にも手を焼いているのだが、その心の奥底の部分がまだ完全には見えない。
人間なのだから、互いに完璧に理解しあえるということはないと俺は思っているのだが、もう少し。もう少しだけ瑠璃の性根が見てみたい、そう思ってしまって。
沙夜のおいしい夕食を沙夜の優しさに包まれながらごちそうになって。
風呂に入って、ベッドに潜り込んで。
疲れに身を任せるがまま、今日は眠りに落ちてゆくのだった。
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次回から、第4章になります。
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