No.5『ナインロード』
「では九道さん、今回もお願いしますね」
「ナインロードだ」
「つまり九の道ですよね」
「それが何語か知らんがナインロードだ」
九道さんといつものやりとりをして、今日はマナーの勉強です。
複数世界のマナーとか、どこから引っ張ってくるんですかね、この人。
「いいか。地球系列世界の配置と同じだから間違いやすいが、パッと見ただけで同じ形、同じ大きさのナイフとフォーク、使う場合はスプーンもだが数本並ぶのがピラーサラス系列だ」
たしかに同じ形ですね。使い分けもなにもなさそうな。
「ピラーサラスでおぼえにくいなら積み木の森でおぼえろ。ホントはピラーサラスじゃなく積み木の森からの文化だからな、これ。むしろピラーサラスなどという愚物を頭に入れん方がいい」
「積み木の森が文化やマナーの元になれるんですか?」
「十数回は回帰する前は、どうにか国があったぞ。百は前になれば大国だった。底面世界に接するから文化交流も起きやすい」
「今ではそんな大国が積み木の寝床と人口一名と」
こうなる前にした観光、なかなか絵本みたいな空間でよかったですけど。
「そもそもピラーサラス自体、積み木がなかった国だからな。あの馬鹿どもがあそこまで馬鹿でなければ素晴らしい国だったのだ。……続けるか」
ナイフとフォークを一本ずつ取って、残りをナプキンで巻いていく。
「好きなのを一本ずつ取って、こう。余ったのは下げさせる。落とさない限りは追加しない」
「使わないなら何で何本も用意するんですか」
「毒殺を防ぎやすくするためだな。七か五番目の貴族家が立てた法に一本のみならば毒を塗るのを許す馬鹿法がある」
「滅んで正解では?」
あ、ナイフ潰れた。
「そうだ。だから滅んで別の国がある。今は同じ形の手作業で作られた素晴らしい食器を、ほら見ろこれほど揃えられるのだとくだらん見栄の文化だ。毒殺云々は今はない」
「もしかしなくてもお嫌いでは」
「嫌い過ぎて今リッチだが」
国でも呪いましたか。
「己が国だが」
「己が」
「国だぞ」
やっぱり、リッチって話が通じませんね。
簒奪者ナインロード
????〜八去元年(渡守算24)
ナインロードは古ピラーサラスの最後の王。多くの歴史書では簒奪者とされるが謎が残る。
貴族とされる八つの家を粛清、法の書き換えなどを行ったとされる。
地球系列世界のイングランド文化圏言語に該当する言葉に近いが、積み木の森系列世界の言語に当て嵌めた場合、名前に意味はない。
ただし、地球系列世界の介入がなかったとは言い難————
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