ペファーが来てから
街に出かけてから数日が経った。
わたしの狩りの効率が良くなった。
「ペファーッ! そっちに行ったよッ!」
「わかってるわッ! 風よ、斬り裂けッ!」
ハーピィのペファー(パプリカと呼ぶのは流石にかわいそうになったので)が加わったからだ。
わたしとダイゴロウが獲物を陸から追いかけて、ペファーが上空から魔法で仕留める。
最初は簀巻きから解放してから、すぐに逃げ出すんじゃないかと心配になったけど、意外に従順になってくれて、一晩寝てもそのまま待ってくれていた。
その後は何度も狩りに連れていくうちにわたしたちの援護を自然としてくれるようになった。
そして今も、ペファーの風魔法によって猪の首が取れた。
「ありがと」
「いいわよ、マスター」
ペファーはわたしのことをマスターと呼ぶ。
そう呼ばせた覚えはないけど、名前呼びだと対等になってしまうだろうという彼女なりの敬称だと思う。
あと、揺れる胸が髪から見えそうになるので、チューブトップを着せてみた。上半身の際どさは軽減した。
このハーピィと暮らして助かることがある。
一つは魔物との会話ができること。
それが発覚したのは、ペファーがダイゴロウたちと和気藹々と話をしていたのを聞いていたから。
気になったので、思い切って訊いてみたら、
「えッ? 話せるけど?」
むしろ驚かれた。
確かに不老不死だけど人間だからわからないんだよ。
話せるのなら、前々から気になったことを訊いてみた。
「わたしのこと、なんて呼んでいるの?」
「あんたのことをボスって呼んでいるわよ」
ボスかいッ! そもそもなんでわたしを慕っているんだろ?
「なんで、わたしがボスなの?」
「そりゃあ、ここのボスを治した上に、威嚇してきたでしょ? そん時からあんたをボスと認めたんだって」
そうなんだ。ってかわたし、転生早々にボスを倒しちゃった上に治してあげたんだ。
「じゃあ、今の生活に満足してるのかな?」
「不満はないらしいわよ。強いて言うなら……いや、やめておくわ」
「なんで、口籠るの?」
「言って頭抱えない?」
「聞かない方が気になる」
「じゃ、言うわよ。ダイゴロウ以外に名前がないって」
「……あー」
そういや、名付けるの忘れてた……。
「できればおいおいでいいってさ」
狼たちがわたしより大人な対応をしてる。なんとか早めに名前を付けてあげよう……。
二つ目、畑の管理が楽になった。
あの怪鳥騒ぎの後、農具と種をもらったので、日当たりのいい場所で畑を作ってみた。
家からは少し離れるけど、広々としている。
水は魔法で生成しているから問題ないとして、無属性魔法の中にクラフトと呼ばれるものがあった。
生前やっていたクラフトゲームを思い出したが、肥料の材料は排泄物だ。
流石に素手で触りたくなかったので、ゴム手袋を家から持ち出して、肥溜めから持ち出していく。
「あんたよくう○こ触れるわね……」
「しょうがないでしょ……。畑の肥料に必要なんだからさ」
こんな時のために溜めていたわけではないが、畑のためだ。我慢しよう。農家さんもやっていることだ。
その甲斐あってか、芽が出てきた。
芽が出てからはペファーに見張ってもらうように命じた。
「なんであたし?」
「だって、鳥除けになるかなぁって……」
「案山子代わり?」
ペファーに命じて数日、あることが彼女の口から発せられた。
「この森、芽をついばむような小鳥なんかいないわよ?」
「じゃあ、鷹とか鷲は?」
「その類は肉食でしょ?」
よって、ペファーを畑の監視役から解任した。
それでもペファーのおかげで森の鳥の生態系が明らかになったのだ。
畑はわたしが世話すれば問題なさそうだ。
よって、畑管理が楽になった以上。
……。
しかし、問題が日に日に明るみになった。
それは肥溜めである。
生活していくうちにどうしても溜まってしまうのがう○こ。
前世が男だから抵抗は、いや、都会育ちだったから抵抗あるわ。訂正します。
それを肥料にしたって、全部を消費しきれるわけじゃない。
肥溜めから臭いが漏れ出し、狼たちが近づかなくなった。
家で暮らせるうちはどうにか打開策を練ろうとしたのだが、ペファーが窓を蹴り始めたので、限界だと思った。
外に出てみると、確かにう○こ臭い……。鼻をつまめずにはいられない。
「どうすんのよッ! ここまで臭くなるなんてッ!」
ペファーが文句を言うのも無理はない。
狼たちが倒れ始めている。わたしとペファーより鼻が利くのが仇になっている。
「どうにかしなさいよッ! このままじゃ眠れないわよッ!」
ペファーの苦情も最もだ。彼女たちは外で寝るから。
「でもなぁ……消臭の魔法なんか見つからなかったよ?」
この数日、無駄に過ごしてきたわけじゃない。
どうにか消臭できないか魔導書を読みふけっていたのだ。だが、それらしき魔法は見つからなかった。
「でも、もう……」
今翼で鼻を覆うペファーを見て、尚更どうにかしたいとは思った。
彼女がその気になればここから飛び立って逃げ出すことができたはずだ。
それなのに、律儀に待ってくれてる。講義はしてくれたけど。
これ以上我慢させられない。
わたしはある魔法を思いついた。
魔導書に載ってあった、スモークの魔法がある。
それの発展形に魅惑のフェロモンを放つものや、防虫効果のあるものがあった。
だったら、作ってみる? いや、やってみよう。
わたしは肥溜めの方へと近づいていく。
近づくにつれ、鼻をつまんでも臭ってくる。
頼むから効いてよ……。
「消臭ッ! デオドラントスモークッ!」
臭ッ! やっぱりう○こ臭いッ!
しかし、その臭さも徐々になくなっていった。
鼻が壊れたわけでも、慣れてきたわけでもない。
ただ単に、魔法の効果が効いてきたのだ。
その証拠に狼たちが立ち上がり始め、ペファーもこっちに近づいてくる。
「やったわねッ! 臭いがなくなったわよッ!」
「そう、よかった……」
安心したのも束の間、今度はハエがたかっているのを見てあることを感じた。
この魔法で消臭できても一時しのぎにしかならないだろう。
だって、う○こはう○こだもん。
「さて、これをどうにかしないと……」
土に還す魔法はあるにはあるが、それだと数週間、畑の手入れと同じくらい手間がかかる。
「だったら、スライムはどう?」
悩んでいるわたしにペファーが提案してきた。
「スライム?」
「あいつらの種類の中にう○こを喰らう種類がいるって聞いたことあるわ」
スライムってあのスライム?
某RPGの雑魚敵だったり、某ラノベで最強に関わる扱い受けてるあのスライム?
「スライムってさ、強い?」
最強系だったら徹夜覚悟でう〇こを遠くの場所に地下深く埋めよう。
「強いわけないでしょ、たかがスライムよ」
なぁんだ、雑魚系のスライムかぁ。
「じゃ、明日探してみるよ」
「それだったら案内するわよ」
おお、ペファーがスライムのいるところを知っているとは。渡りに船だ。
「いいの? 助かるよ」
「いや、あたしにも関わる事態だから。それにマスターを放ってはいけないでしょ」
任せなさい、とわたしより大きい胸を張った。
これなら安心してもいい、この時はそう思っていた。
だが、この時のわたしたちは知らなかった。
スライムを捕まえるために、どれほど苦労するかを。
……今回の話、う○こ多いな……。
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