第12話 秋 やっぱ、山本さんは期待を裏切らないなー

やっぱ、山本さんは、期待を裏切らないなあー




道着を着た山本さんがゆっくりとした仕草で弓をあげる。

それは様式美なのか、作法なのか。

でもそのゆっくりとした動きは、美しいと思った。

そして山本さんは弓を弾く、矢の羽根が山本さんの頬に触れる。的を見つめる横顔がキリッとして格好良かった。

まさにハンサムガールだ。

そして指を放す、そして命中。

とはいかなかった。

アーとメイが声を漏らした。


「やっぱり、腕はまなっていた」

「格好良かったよ」とメイが言う。

「メイ、アー、て声あげていたじゃない」とあたしがいう。

「それは当たると思ったからね」

「あーあ、二人にいいとこ見せようとしたのにな」

「でも本当にカッコよかったよ」と最後の美味しいところをあたしがかっさらう。

弓道場近くの喫茶店だった。


三人で歩いているときに、アーチエリーを持った子がメイに話しかけてきた。

話はすぐに終わってその子は離れていった。

流石に交友範囲が広いメイだと思っていたら。

あたしもできるかなと山本さんがいいだした。

「弓矢、好きなの」とメイがいう。

「そんな夜店で景品取るようなものみたいに言わないでよ、弓道という武道なんだから」

「やっていたの」とあたし。

「うん。ちょっとね」というと同時にあたしがクスクス笑い出した。

「なあに」と山本さんがキョトンとしている。

「ごめんなさい。なんか山本さんは期待を裏切らないなとおもって。だってそのままだもの。なんか薙刀とか弓道やってそうと思っていた」

「ごめん、薙刀もちょっとやっていた」それを聞いてあたしとメイが手を叩いて大笑いをしてしまった。

かくして山本さんの腕を見ようということになって、誰でも出来る弓道場に来た。

本当に、メイと山本さんは正反対だ。

こんな風に日本人の友達が出来るなんて、あたしはちょっとだけ、日本で 暮らしてもいいかなという気になってきた。


三人で夕飯を食べながら、全く生産性のない話を延々と続ける。

そんなのもいいなと思う、ところがたまにどうでも良くない話へと発展することもある。

「そういえば、公君とはどうなっているの」

「こらメイ、人の友達を気安く呼ぶな」

「まだ友達なんだ」これは墓穴を掘ったか。

そう公君とはまだ友達のままだ。

あれから何度か映画に行き、横浜中華街にご飯を食べに行った。

でも幼馴染というのは、一緒に遊んでいたために、二人で出かけても特別なイベント感がない、野山を駆け回っていた男の子と女の子が、少し大きくなったので、家の近所から映画館や横浜中華街にステップアップしただけなのだ。


ジョウバに跨って卑猥な腰ふりををしていると、いつものようにバーバがやってきてあたしの事を見ていた。

ジョウバを降りて近ずくとまたプイといなくなってしまうので、あたしは気づかないふりをしていた、するとバーバはいつまでもあたしのことを見ている。

まるで慈しむように。

本当にこの野良猫は東京バーバなのかと思う、バーバが猫になってあたしを見守ってくてれているのか、そう思うとあたしはスキを見て縁側にダッシュしょうとした。

ところがジョウバを降りるときバランスを崩してズデンとすっ転んだ。

するとバーバはあたしを小馬鹿にするようにニャと笑って、プイとどこかに行ってしまった。

あんな憎たらしいい態度絶対に東京バーバじゃないと思って、仰向けになった。

すると丁度バーバが写っている写真が目に入った。

いやあの態度こそ東京バーバだと思い返して、おかしくて笑ってしまった。

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