第5話  サダコおばちゃん

サダコおばちゃん




帰るとサダコおばちゃんが来ていた。

「お帰り莉奈」

「ただ今」まあここはサダコおばちゃんの家でもある。

サダコおばちゃんが夕食を作ってくれていた。

この家にはないはずの食材が使われていた。

「夕飯の支度をしようと思ったら冷蔵庫に何もないじゃない、慌てて買いにいったのはいいんだけれど、これほど食材がないと言うことは。外食オンリーなのかなと思ってヒヤヒヤしながら作ったわよ」

「なんで」

「あっ、ご飯済ませて来た。なんて言われたら、おばちゃんの立場がないでしょう」

「大丈夫よおばちゃん。そんなにあたし、お金もらっていないし、ママが置いていった食材がちょうど無くなって来たところだから」

「そう良かった」

「じゃあ、食べよう」

「うん」

「手、洗ってね」

「うん」サダコおばちゃんは手を洗うとか、そういうことにはうるさい。

夕食はご飯お味噌汁、漬物、サラダ、おかずが鯖の味噌煮、それに厚揚げをコンニャクと煮たもの、かなりの和風だ。

「いただきます」と言って手を合わせる。

正直言ってなぜ手を合わせるのかわからない。

「へー、莉奈はいただきますの時、手を合わせるんだ」

「そう教わっただけ、逆にどう言う意味があるのか知りたいくらいよ」

「おばちゃんも分からないな、でも可能性を想像はできる」

「どんなの」

「まず一つ、お百姓さんありがとう。二つ目がお米には神様がいるという言う考え方、天候を司どる神様、ありがとう、作ってくれた人にありがとう。生きている物の命を奪って栄養としているので、ごめんなさいありがとう、他にもあるかもね」

「おばちゃんすごいね」

「何が」

「だって誰かに指摘されないように幾つもの可能性を言って、答えも言及をしない。たとえ間違っていたことを言っても、責任はとらないよと言っているんだもの」

「あんたね」

「見習おうと、言っているのよ」

「もっとタチが悪い」


「ねえ、おばちゃん」とあたしは大量のDVDを整理しているサダコおばちゃんに声をかけた。おばちゃんにとって韓流ドラマは生きる糧らしい。

題名も覚えていない、韓流ドラマをいくつ勧められたかわからない。

莉奈これすごく面白いよ。と言うので、どう言うところが、なんて聞くと、一話目から粗筋を話し始める、

「おばちゃん、莉奈、面白いところを聞いているんだよ」と言うと、

「面白いところもあらすじが分からないと面白くないのよ」と返してくる。だから、おばちゃんの前で韓流ドラマの話はしてはならない。

「どうしたの」と後ろから覗いたあたしにおばちゃんが気づいた。

「あっ莉奈、おばちゃんの韓流ドラマDVD、勝手に見ていいからね」

「いや見ないから」

「なんで」

「いやだ、そんなドロドロした話ばっかなの」

「なに言ってるのよ、そこがいいんじゃない」

「ピュアーな女子大生に人生を絶望させるような物勧めないでよ。莉奈はもっと清く正しく美しく、純粋無垢な青い空のような、生活を送りたいんだから」

「全く口の減らない小娘だね」とおばちゃんは笑いながら言う。

こういう関係が成り立つのはサダコおばちゃんだけだ。そのノリであたしはサダコおばちゃんに尋ねた。

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