高校生編〈9〉

「ここです。ここが私の行きつけ…というか良く足を運ぶ喫茶店です」


「おぉ!」


学校を出て新垣さんに連れて来られた先には、The喫茶店!と言わんばかりの、いい意味で古びた古民家が在った。


「渋いね、新垣さん。僕こういうお店に入るの初めてだから緊張するよ」


「いえ、私もそんなには知らないんです。ただ、ここが1番落ち着くんです」


少し照れているのか俯きながらも、少し誇らしげに彼女はそう言った。


ガチャーー


僕はドアを開けて中に入り、驚愕した。


「凄い……カッコいい!」


店内全てが木でできている。

 テーブルも、イスも、カウンターも、棚、壁、窓枠、果ては天井から吊るされているライトまで、とにかく全てが安心するような深い茶色で彩られていた。

 よく見たら置かれている小物も殆どが木製のものらしかった。


「中はこんな風になってるんだね!あ、あのフラスコみたいなの見たことある!アレでコーヒー作るんだよね!どうやってできるんだろう?」


「フフッ。気に入ってくれた?」


「うん!凄く!ありがとう新垣さん」


久しぶりに子供のようにはしゃいでしまった。新垣さんに見られて少し恥ずかしい…けどそれほどこの店はワクワクさせられる。


「いらっしゃいませー」


店員なのだろう。カウンターの奥の方からお姉さん?おばさん?が出てきた。

 すごくきれいな方で若く見えるんだが、佇まいというか雰囲気というかドッシリしている感じが人生経験豊富なのだろうと思わせる。


「珍しいねマコちゃん!彼氏連れとはこれ如何に!」


マコちゃんとは新垣さんのことだろう。

 新垣真琴…彼女の名前だ。彼女のことをマコちゃんという人は初めて見たな。よっぽど仲が良いのだろう。


「ちょっとやめてください!彼に迷惑じゃないですか」


「彼に迷惑……ねぇ。なるほどねぇ」


店員の女性が新垣さんを見ながらニヤニヤしている。


えっと…僕はこれどうしたらいいんだろうか。

 女子グループのノリって苦手だ…。


「ほら困ってるじゃないですか!もう…。」


「フフッ。ごめんごめん。んで、どしたの今日は?」


「そう、お願いがあってきたんです。今日から少し場所を借りてもいいですか?」


「あぁ、そりゃ構わないよ。でも何で?」


「二人で調べたいことがあるので、静かな場所がいいかと思って」


「確かにウチは賑わってないからねぇ」


「あ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて…」


「冗談だよ!アッハッハ!じゃあ、あっちの角を使って構わないよ。窓際のロマンチックな場所を提供してあげようじゃないか。大切なハナシがあるだろうからね」


「…もう!ミヨさん!」


ミヨさんって言うのか。豪気な人だなぁ。


「よろしくお願いします!」


手をヒラヒラさせてミヨさんはまた奥に戻っていった。


「ごめんなさい高平君。ミヨさんいっつもあんな感じなの」


「大丈夫だよ。だけど本当に場所を使わせてもらって良いのかな?お店の邪魔にならない?」


「大丈夫。ミヨさんは気にしないと思う」


「随分仲が良いんだね。じゃあお言葉に甘えて、これからはここを使わせてもらおうかな」


こうして僕らは、自分たちのことを調べるために、毎日放課後にミヨさんのお店に通うことになった。

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