高校生編〈4〉

「おい。聞いてくれよ航大。俺さ、学級委員にさせられたんだ」


登校中、偶然駅で会った和也が興奮気味に話しかけてきた。


「あぁ、知ってるよドンマイ」


「それがさ、女子の学級委員誰だったと思う?」


「確か浅野さんだろ?」


浅野さんはクラスで1番の美少女…らしい。

 可憐で儚いっぽい雰囲気が一部の男子に人気なんだとか。

 僕からすれば、誰かが守ってくれる…という感じが多少あって正直あまり好きではない。


「そーなんだよ!俺が頑張ってあげナイト!」


ほら、こういう奴が持ち上げるから…。


「あぁ。頑張れよ。良かったな学級委員になれて」


「おうよ!それより今日は放課後に図書委員だろ?どうなんだ?新垣さんとは」


「どうって…なにが?」


「だから胸キュンファンタジーは始まりそうか?」


「ブフッ!」


思わず吹き出してしまった。


「ないよ。新垣さんあんまりそういうのに興味なさそうだろ。ましてや僕じゃあね」


「そうなのか?でも図書委員になりたいって

新垣さんが手を上げるの珍しくねぇ?」


言われてみれば、確かに授業中も手を上げたり発言してるの見たことないな。


「何か目的があったんじゃない?」


「いやだからお前が目的だったんじゃないかってことだよ!」


「ハハッ。ないない」


「全くお前は…。思春期をなんだと思ってやがる」


恋愛か。

 あの事故以来、そんな気持ちになれない。

 これから誰かを好きになるなんてあるんだろうか。全く想像できないな。



今日は和也が変なこと言うから全然授業に集中できなかった。

 気付いたら放課後になり、小気味いいリズムでチャイムが鳴る。


音が鳴り終わると同時に新垣さんがそっと僕の席まできた。


「高平君、先に行ってるね」


お。忘れないように声かけてくれたのかな?

 新垣さんは意外と気配り上手なのかもしれない。


「あ、ちょっと待って。僕もう大丈夫だから一緒に行こう」


「わかった。一緒に行きましょう」


「ありがとう。さぁ行こっか」


僕は少し悩んだが、今朝和也に言われて気になっていたことを聞いてみた。


「新垣さんは本が好きなんだよね?だから図書委員になったの?」


微妙な間があいたので「しまった!」と思ったが彼女はゆっくり答えてくれた。

 どうやらどう伝えたらいいのか迷っていただけのようだ。


「私は、本が好きだから図書委員になったわけじゃないよ。ただ少し…気になってたから…」


「ふーん。そうなんだね」


少し茶を濁すような言い方が気になるけどこれ以上はやめとくか。


「航大くんは?なんで図書委員に?」


「あぁ僕は自分のことで調べたいことがあってね。それにほら、和也といると集中できないからさ。わかるでしょ?」


そう言って僕がわざとらしく笑ってみせると、キョトンとした顔で間を置き、可愛らしく笑ってくれた。


僕は、意外にも可愛らしいその笑顔に、久しぶりに胸の高鳴りを覚え、何故だか少し安心した。


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