高校生編〈3〉

「もうすぐ一学期終わるから、今日のホームルームは二学期の委員決めするぞ」


「はーい」


委員決めか。僕には、実は入ろうと思っている委員がある。


「やっぱり学級委員以外がいいな。めんどくさくないし」


斜め後ろの和也が目立たないように小声で話しかけてきた。

 こういうのは目立つと学級委員に推薦されてしまうので、いつもうるさい和也はコソコソとして隠れている。

 まぁコイツは静かだと逆に目立つんだけどな。


「棚橋、学級委員やれよ」


ほらね。言われた。


「嫌だ!俺は直行直帰を信条にしてるんだ!あったかホームが待ってるんだ!」


「いや帰りに街出て遊んでるじゃん」

あ、つい声に出してしまった。

……すまない、和也。そんな恨めしそうに見ないでくれ。


「じゃあ航大がやってくれよぉぉ!委員なんて死んでもやりたくねぇよ!めんどくせぇよ!他のやつにさせとけばいいんだよぉ!」


あぁ…先生のご尊顔が般若に……気付け。気付いてくれ和也。


「いや俺は図書委員がいいんで学級委員は辞退するよ」


これは本当にしたかったことだ。

 あの事故の時に起きた、時間が止まり選択を迫られるという現象。それについてゆっくり調べたいと思っていたからだ。

 それには集中できる静かな場所と、可能性は薄いが、ある程度心理学なんかが載っている書籍が欲しかった。それにうってつけの場所が図書室だと考えた、というわけだ。


それにしても昔を思い出すな。

 小学校の頃は委員を押し付けられると断れなかった。

 今じゃ普通に断ることができるのに。嫌なら断るって当たり前なんだけどね。

 でも、それができなかった自分はよっぽど臆病だったんだな。と改めて思う。

 そして、当時の自分を支えてくれた春ちゃんにも感謝の気持ちが溢れてくる。


「じゃあ高平は図書委員な。基本二人一組だから、他に図書委員やりたいやついないか?」


「はい…」


意外にも手を上げたのは…新垣さんだった。


「新垣はいつも本読んでるもんな。よし、図書委員は決まったな。あとはーー」


こうして委員決めも無事に終わり僕と新垣さんが図書委員となった。

 和也は放課後に職員室に呼び出された。


「ヨロシクね新垣さん。図書委員初めてだから迷惑かけるかもだけど」


「ううん。こちらこそ。毎週金曜日の放課後に仕事があるから忘れないでね」


「わかった。ありがとう。それじゃ」



もう6月も半ばに入った。

 春ちゃんの7周忌…つまり事故の日も近づいている。

僕は気持ちの整理もだいぶ落ち着いて、これから前に少しずつ進んでいける。


はずだったんだーー。

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