第6話 舞踏会
今日はアレックス王太子とブレンダ嬢に特別講義をしている。
今度開かれる王家主宰の舞踏会に、これまであまり国交の無かったビイラ王国、シイノ王国、ディード王国の特使を招いて友好を図ろうとする試みがなされるからだ。
これに元々友好的だったエイナ王国の大使も招いて、我がアルファ王国主導の元、5か国友好の礎としたいという目論見もあるらしい。
エイナ王国の大使はもちろんヘンリー様だ。この間の一件で更に友好を深めたと思っているので、また会えるのは正直嬉しい。
そんな訳で、王族として参加するこの二人には、せめて招待する4か国の言葉で挨拶できるくらいにはなって欲しい。そのための特別講義である。
「ブレンダ、今のところ発音が違う。やり直し」
「うぅ...ごめんなさい...」
「ブレンダは要領が悪いなぁ~♪ 僕が教えてあげようか?」
「いいから殿下は黙ってて下さい」
「だってさぁ、僕はとっくにマスターしちゃったよ?」
「誰もが殿下みたいにすぐ出来る訳じゃないんです。お願いだから黙ってて下さい」
「あ~♪ 分かった♪ それじゃあ教え方が悪い」
「黙ってろっつっただろうがぁぁ! その口、ホッチキスでパッチンして塞ぐぞごらぁぁ!」
「ヒイイイッ!」
おっとマズい。ブレンダを怖がらせるつもりはなかったのに。それもこれもこの無駄に頭の良いお子ちゃま王太子が悪い! 決してブレンダは要領が悪い訳でも頭が悪い訳でも無いんだよ! 比べる相手が悪いってだけなんだ!
本当にブレンダは良くやってるんだよ。公爵令嬢で王太子の婚約者。将来、王妃様になる人だっていうのにちっとも驕り高ぶるところが無い。学習意欲も満々だ。とっても良い娘だから私も大好きだ。だから出来るだけサポートしようと思ってる。
この間の外交デビューはスチャラカ王太子のせいで散々だったから、今度の舞踏会ではしっかりと務めを果たして欲しい。心からそう願ってる。
◇◇◇
そんなこんなで舞踏会当日。会場には既に沢山の人が集まって、とても綺羅びやかな雰囲気だ。参加者達が続々と王族に挨拶しにやって来る。
何かあったらいけないので、私も王太子とブレンダ嬢の側に控えている。最初に挨拶にやって来たのはヘンリー様だ。
『本日はお招き頂きまして、ありがとうございます』
『ようこそお越し頂きました。ごゆっくりお楽しみ下さい』
良し良し。ちゃんとエイナ王国の言葉で受け答え出来たね。勉強した甲斐があったってもんだよ。ヘンリー様も私と目が合うとニッコリ微笑んでくれた。今日も良い人だ。
その後、ビイラ王国とシイノ王国の特使が続き、どちらも如才なく受け答えした。順調順調。残るはディード王国の特使だけだ。その特使がやって来た。顔に醜悪そうな笑みを浮かべながら...
私はとても嫌な予感がした。
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