第3話 謝罪
「この度は誠に申し訳ございません...あの...このような菓子折り1つではとてもお詫びにならないと思いますが、何卒お許し頂けますと幸いにございます...」
「ご、ごめんなさ~い! グスグス...」
「ねぇ、ヘンリー、どうだった!? ウケた!? ウケたよねぇ!? ブレンダの口から『インポ野郎』だもんねぇ♪ キャハハハッ♪」
このお子ちゃま王太子がぁ~! 私とブレンダが誠心誠意謝ってるのに何してやがる! シバいたろか!
「あ、頭をお上げ下さい! 僕は気にしてませんから! どうせまたいつものアレックス殿下の悪ふざけだと思ってましたから!」
「そう言って頂けますと救われます...」
そうなんだよ...このバカ殿下はこんな風に度々悪ふざけをするんだよ...でも分かってるか? もう15歳なって大人の仲間入りしたんだぞ?
これまでみたいに子供の悪ふざけじゃ済まなくなるんだぞ? いやホント、マジでこの国大丈夫か? 今までの教育係なにやってた?
「ヘンリー様、せめてものお詫びとしまして私に出来ること、通訳の仕事がありましたら何なりとお申し付け下さいませ」
「そうですか...それではお言葉に甘えまして..明日、ビイラ王国との外交交渉が控えているのですか、たまたま我が国のベテラン通訳が病に倒れ困っておりまして、お力をお貸し頂ければと存じます」
「私で良ければ喜んでお手伝いさせて頂きます!」
ヘンリー様が大人の対応してくれて助かったよ~ いや実際大人の人なんだけどね。20代後半くらいかな? 穏やかで優しい人なんだよね~
「え~! そんなのダメだよ! アビーはウチの人間なんだから! 貸さないよ!」
「やかましいわ、このクソガキがぁ! 誰のためにこちとら苦労してると思ってやがんだ! 黙って口閉じてろ! その口縫い合わせてやろうかぁ!」
不敬? 知るか! そんなもん犬にでも食わせとけ!
◇◇◇
翌日、私はヘンリー様とビイラ王国の大使との交渉の場に通訳として参加していた。ビイラ国の大使はなんというか...一言で言えばキモい感じの人だった。私のこと嫌らしい目付きで見てくるし...交渉自体はスムーズに進んでるみたいだからいいんだけどね...
内容は守秘義務があるから詳しくは話せないけど、掻い摘んで言えばビイラ王国のとある鉱山をエイナ王国に売却するという話。
原価回収がどうのこうの、関税比率がああだこうだ、この辺りは私も外交の経験が長いから、特に問題ない感じだってのは大体分かるようになって来た。
ただちょっと気になる点があるとすれば、エイナ王国に有利過ぎる条件だってこと。とにかく、なにがなんでも売りたいっていう意志をビイラ王国サイドからひしひしと感じるってことくらいかな。
交渉も終盤に差し掛かって、ビイラ王国からの売り込みが終わり、後はエイナ王国からの最終回答待ちになった時だった。ビイラ王国と向こうの通訳が何やらニヤニヤしながら小声で話しているのが聞こえた。
『これで不良債権が片付くな』
なるほど、そういうことか。どうやらその鉱山には何か問題があるらしい。それを隠して売ろとしていると。しかもご丁寧にさっき小声で話してたのはシイノ王国の言葉だ。こっちが意味を分からないと思って勝ち誇ったかのように言ってたな。だが甘いよ。
私はヘンリー様にそっと耳打ちした。するとヘンリー様は厳しい顔で、
『どうやら貴国の鉱山には何か問題があるみたいですね? 不良債権の意味をご説明頂きましょうか?』
そう言われたビイラ王国の大使は真っ青になって、交渉はそこまでとなった。後日聞いた話だと、その鉱山は地盤が緩く落盤が絶えない所だったらしく、買わなくて正解だったとのこと。
ヘンリー様にとても感謝された。
これでお詫びになったかな?
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