第45話・やっと婚姻の運びとなりました
それから三日後のこと。アデリアーナはソラルダットと、マクルナ国王の居城レイディア城にいた。双方の誤解が解けたことで、無事に二人は婚姻する運びとなったからだ。
ソラルダットが朝議の席で、宰相を始め重臣たちに、リスバーナ北国の王女、アデリアーナとの婚姻を正式に告げ、それに向けての用意がなされる運びとなった。
朝議が済んで、ソラルダットと王の間にいたアデリアーナをエンデルが訪ねてきた。
「おめでとうございます。国王陛下。これでようやく陛下も身を固められる決意をされ、我々臣下としてはほっとしておりますよ」
マクルナ国の宰相、エンデルが微笑む。レイディア城に初めて足を踏み入れた時に、居並ぶ臣下たちの最前列で、出迎えてくれた眼光するどい中年の男性だ。アデリアーナを前にして、孫をいとおしむ様な目つきで迎えてくれた。
「陛下は今まで女性を遠ざけていらしたので、芳しくない噂が横行しておりましたからな。こんなに美しくも愛らしい御方を、王妃さまとして迎えられるとは思ってもいませんでした。これでマクルナ国も安泰ですな」
「そのことはもういいだろう。エンデル」
アデリアーナを前にして言うことではないだろうと、ソラルダットが目で制する。アデリアーナと目が合うと、ソラルダットは一時、ある噂が流れていたのだと白状した。
「年頃になると言い寄る女性や、縁談をすすめる臣下が増えて、厄介な相手から逃れる為にハロルドを口実に逃げ回っていたら、それが余計な噂を招いたらしい。ハロルドと特別な関係にあるのではないかと、思われたらしい」
「まあ」
ソラルダットは見目もよいし、王の妃になることを望んで言い寄る女性は少なかったのは当然だろうな。と、アデリアーナが思っていると、エンデルが訳ありに言う。
「もとはと言えば、陛下がこのレイディア城で仕える者は、男性で占めてしまわれたせいもありますな。女性は数えるくらいで、ナネット殿をはじめとした寡婦の女性しか置かれませんでしたし」
「先王の時代、母上を始め、後宮の女性陣たちが幅を利かせていて政務にも支障をきたしたからな。二の舞は御免だと思っていた」
「陛下が王位につかれて初めになさったことは後宮の解散でしたし、相当恨まれましてね、新国王は女性に興味がないのだと、吹聴されていた時期もあったのですよ」
つまり後宮の女性達が腹立ち紛れに、ソラルダットが男色家だと言いふらしたということだろう。
(迷惑な話ね。ソラルダットも大変だったのね)
「おかげで余計な虫が群がって来なくなって清々した。余はアデルさえ側にいてくれたらいい」
(わたくしもソールが側にいてくれるだけで幸せ)
臣下の前なので、アデリアーナと二人きりでいるときと違って、陛下使用の言葉になっているが、アデリアーナへの想いは、臣下の前でも隠すつもりはないらしい。エンデルの前でも堂々と繋いできた手に、恥かしく思いながら応じていると、冷やかされた。
「この分だと、お世継ぎにも早く恵まれそうですね。この城も黒一色で鬱蒼とした雰囲気でしたが、そう遠くないうちに華やかさが加わって明るくなることでしょう。その日が楽しみですよ」
一年後には、アデリアーナの王城入りが決まっている。離宮からの引っ越しが決まったのだ。そうなればほとんど男性で占められていた王城も、離宮から来た女官たちが加わる事によって、明るくなるだろうとエンデルは笑っていた。
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