第6話 無人島の戦い!魔物からみんなを守る!
わわっ! 地震のような揺れが発生したと思うと、近くの砂浜の中からサンドゴーレムが飛び出してきた。推定4メートル……でかい。
「みんな逃げて!」
この魔物は土属性のはず…図書館の魔物辞典で調べた知識をフル活用する。この子の弱点は風! 私の詠唱した竜巻が魔物の体を切裂いていく! 効いているのか…? どうなのだろう。私の実戦経験が少ないのがここで露呈している。今までは私はほぼ見ていただけだから…。やはり効いていないのか、それとも痛みに耐性があるのか? 構わず近づいてくる。なら、もうひとつの竜巻を追加!
いつのまにか目の前にいた。危ない! 慌ててバックステップ。
しかし、魔物は大きく振りかぶり、砂浜をえぐりながら完璧なアッパーが私の腹部を捕らえた。そんな…バックステップして距離を取ったのに…腕が伸びてくるようだった…。
私は吹き飛び、ヤシの木に背中から激しく叩きつけられた。痛い…だめだ、体は動けない。みんな…はやく…逃げて。私は倒れたままみんなが逃げるのを見ていた。
漂流メンバーたちは、乗って来た小舟で沖へ逃げようとしている。いいよ…そのまま急いで…待って…何をするの! サンドゴーレムは近くにあった岩を掴みだした。そして、持ち上げて投げるような動作をしている。まずい…やめて、やめて! あぁ…小舟が…木っ端みじんに大破してしまった。
主婦メロディスさん、掃除人ストフリーさん…岩の直撃を受けて吹き飛び浜辺に落下した。駄目だ……ふたりとも動かない。海が血で赤く染まっている。地質学者のアーロニーさんも巻き込まれ、彼は海の中に落ちてしまった。
夫のエグバートさんは、雄叫びをあげながら斧を構えてサンドゴーレムに突進しだした。メロディスさんを殺された仇を討つのだろう…でも、逃げて欲しかった…戦闘力が違いすぎる。しかし、私の予想に反して、エグバートさんの力は凄かった。サンドゴーレムの足を綺麗に切断した。すごい…サンドゴーレムは…止まっている。ここだ…加勢するなら! 私の体、動け動け動け! うぅ…だめか…私はまだ彼らの戦いを見守るしかできないのか…力がない者は無力だ。
あぁ…サンドゴーレムはエグバートさんの真上で拳を握りしめていた。よけて!
気が付いた時には、グチャリと音が響いた。斧だけが空しく吹き飛んでいった。エグバートさん……首から上が…無い。一番頼りになりそうなエグバートさんがあっさりと……………。彼の体はゆっくりと倒れた。
ジャレントくんとエドワーズさんは、私に駆け寄って肩を貸してくれた。ようやく立ち上がれた。まだ足の震えは止まらない……。
「大丈夫?」ふたりともそう聞いてくるけど顔面蒼白だ。やはり怖いのだろう。
えぇ…こんな時こそ冷静にならねば…私は、魔力をゆっくりと集中し体力を回復する。
船員のジャスカーさんは、エグバートさんの斧を拾いあげた。「くそぉおおおおおおお」彼は思い切り跳躍、力いっぱい叩きつけた。すごい…サンドゴーレムの脳天に斧が深々と刺さった。そして、サンドゴーレムは倒れかかる。勝った、誰もがそう思った。
しかし、ジャスカーさんは斧から手を離して無警戒でそのまま着地した。あっ、危ない!サンドゴーレムは倒れると見せかけてハイキックの態勢をしていたのだった。
鈍器で肉を叩くような音がした。
なにかが目の前に飛んで来た。
なんと、ジャスカーさんの首から上だった。彼の目は驚いたままだった。ジャスカーさんの体は血を大量に吹き出しながら崩れ落ちた。
ジャスカーさんと目が合う……無念ですよね。私は唇を噛みしめながらそれを見ているだけだった。
「よくも、ジャスカーを!!!」
ブラッドリーさんは震えあがっているケイシェルさんをかばうように前にでる。地質学者の魔法地震だ。地割れが起こりサンドゴーレムは呑みこまれた。地割れはゆっくりと閉じてダメージを与えている。これは、結構ダメージあるのかも?
私たちはそのまま見守っていた。
……………。
1分は経ったか? 辺りは静寂に包まれた。
ブラッドリーさんとケイシェルさんは、顔を見合わせて頷いた。
「倒したか…友の仇を討てた…」「ふぅ…よかった…」とふたりとも安堵した。
これで終わった。私も安堵した。
えっ? 地中から何かの音がする。まさか!
砂浜の中からサンドゴーレムが現れた。地中を移動していたのか…。
そして2人を捕まえて地面に叩きつけた。痛みで身動きがとれないふたり。そしてゆっくりとサンドゴーレムは体全体で倒れ込んだ。なにかが破裂するような音が響く。
あっという間に大勢の仲間が亡くなった。許せない…でも…怖い。また、あのパンチを貰ったら今度こそ終わりだ。けれど…戦えるのは私だけだ。震える足を両手で抑えて深呼吸をする。動け…動け…せめてこのふたりだけでも助けなきゃ。
ジャレントくんとエドワーズさんに島の奥に逃げるように指示をした。ふー…ふー…、こんな怖い思いをしたのは初めてかもしれない。何がレベルアップして自信が付いたのですか…こんなに震えて…情けなくて涙も出てくる。これが恐怖か…所詮強敵と戦っていない経験不足。
サンドゴーレムは、胸元を鮮血で染めながら立ち上がる。この魔物は、何故血を求めるのか。この島の主なのか…私に再び狙いを定めたようだ。今度こそ殺そうと意思を感じる。片足がスネから先がないためか、ゆっくりと向かってくる。故に、余計に奇妙な歩き方で不気味さも感じられる。ゆっくりだけど体格は大きいため歩幅も大きい。あっという間に目の前に現れた。
恐い…だめだ…動けない。もぅ、回復して動けるはずなのに……。
右手でハンマーナックルをしてきた。大きな拳…私の胴体以上の大きさ…巨大な影が襲ってくる。
“落ち着け、やつの左足は破壊されている。やつの左側に回り込み弱点をつけ”
え!?
なんだろう…急に落ち着けた。そして動きも見えた。いまの声は…! 私の中のもうひとりの人!
私はひらりとよける、左足に竜巻魔法を放つ、よし…体のバランスは不安定になっている。
いまのうちに、ゆっくりと飛翔で空中を上昇する。
これで、この魔物は私を捕まえることはできない。
弱点を探さなければ…見つけた、頭だ。
斧は頭に刺さったままだ。火球を全力で連発した。斧を伝って体内にダメージが与えられるはず。有利属性の風魔法を使いたいけども、竜巻だと斧が吹き飛んでしまう。よし…効いているみたい、明らかに嫌がっている。時々ジャンプして私を捕まえようとするけど、私は空を飛べる。ふふっ、残念でしたね。
このサンドゴーレムの戦闘力は約500、強敵だけど勇者様に会うまで絶対に生き延びる。さっきは負けたけど、今度は…負けない! みんなの仇!
うわぁああああああ!!!!
私は叫びながら、魔法の連発をする。思った通り体にかなりの負担だ。だんだんと目はかすれ意識は朦朧としてきた。もう駄目か…あと少しなのに…魔王討伐の旅はここで終わりかな……。
ごめんね、みんな。女将さん、マリー、お爺様、勇者様に会えずにごめんなさい。でも終わりたくない。このまま死にたくない。だけど…もう力が入らない…。
自分を浮遊させている魔力はだんだんと無くなって来た。魔力切れに伴い、ゆっくりと高度も下がり始める。もぅ少しなのに…。
えっ!? 声がする。あれは…船? 人が降りて来た。
「距離を保て! 近づいてきたら離れろ! 隙を見て攻撃! 攻撃したらすぐ離れろ!」
見知らぬ若者が3人を引き連れて加勢してくれた。そして、サンドゴーレムと戦い始める。さらに船からも魔法の加勢だ。すごい…魔物はダメージを受けて体が崩れ始めていた。よかった…これなら…倒せる。
誰だか知らないけど…ありがとう……。
………
……
…
「ここは…」
どこだろう? 部屋と言うことはわかる。けど…私は…戦っていたはず…夢だったの? 宿屋のような感じだ。
ひとりの青年が心配そうな目で私を見守ってくれていた。どこかでみたような…。
「目が覚めたか? 貴女は、ひとりで戦っていたところを俺たちが駆け付けて助けた。間に合ってよかったよ…」
あ、やっぱり…あの時の…夢じゃなかったのか…。
「あれ…服が…寝間着に…」
「それは俺じゃないぞ! ここのギルドのお姉さん、スージーンさんが着替えさせてくれたと思う。貴方は凄く熱を出していたからな…」
そう…やっぱり、みんなは…助からなかったのかな…ごめん…ごめんね、私が弱かったばかりに…涙が自然とあふれ出た。
「お、おい! 大丈夫か! ちょっと人を呼んでくる!」
「あの…あなたは誰ですか?」
「俺はディナード!」
彼は、慌ただしくドアを開けて誰かを呼び行く。
ディナード…。まさか、彼が勇者様!?
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