38 むふっ
パパとアーヴァイン陛下に失礼なことを言われて、むくれているアンジーちゃんですが、アルジャーノンお兄様の婚約者であるジョゼフィーヌ様がイヴァちゃんのおかげで元気になったので、会場へと戻ることになりました。
会場内にはアーヴァイン陛下とは違う国の獣人たちもいて、そちらは国王ではなく王子か大使が来ているんだって。
なんか、奴隷だと聞いていたティー君を「同じ獣人とは思えぬほど貧相だな。さすがは奴隷だ」みたいな感じで嘲笑しようとしていたらしいんだけど、ティー君はゴリッゴリのマッチョで毛並みもツヤツヤふわふわで血色も良く、どうかすると自分たちよりも良い生活をしていたのでは?と思えるほどだったので、なぁーんにも言えないみたーい。ざまぁっ!!
ティー君をつつける場所がどこかにないかと最終的には「父親の顔も知らぬとは、哀れなものだ」みたいなことを言ってきたので、「わたくしも母の顔を知らなくてよ?」と、返しておいた。フッ、ざまぁっ!!
ていうか、喋ってみて気付いた。偉そうに喋ると噛まないっ!!
「むふっ」
「おい、アンジェリカ、気持ち悪いぞ」
「偉しょーにしてると、噛まなくて済むわ」
「噛んでんじゃねぇか」
「お黙り」
「偉そうにし過ぎだろ。俺、国王だぞ?」
アーヴァイン陛下が何か言ってるー。でも、気にしなーい。
というか、愛のある雑さやで?蔑ろとちゃうで?
あまりにもアーヴァイン陛下とばかりアホをやっているとクリフがヤキモチを焼くので、軽食コーナー付近にてティータイムへと突入しました。
普段から流れるようにして膝に乗せられるんだけど、さすがにこの場ではやらなかったことに「常識はあんのね」と思った。
それにしても、何やら視線がグサグサ刺さるのよ。何やねん。
「あー、羨ましいんだろうね。僕たちの婚約がまだ候補でしかなかったから、正式な婚約を結んでいない家が結構あるんだよ。それにクリフは婿だろう?アンジーと年齢が近い子息は、自分にも可能性があるかもしれないと期待しているんじゃないかな?」
「は?ないわ。既に成人した優秀な夫がいるのに、なぜ?図々しいわね」
「ふふ、まあ、そうだよね。アンジーと歳が近いようでは、仕事が出来るようになるまで何年かかるやら。それに領地を任せるのだから信頼もできないと、ねぇ?」
アルジャーノンお兄様が周囲にそこそこ聞こえる音量でお喋りするので、高慢アンジーちゃん仕様で返しました。じゃないとカッコ悪く噛むからね。
先程のアーヴァイン陛下とのやり取りで、この仕様なら噛まないとはしゃいでいたのをアルジャーノンお兄様もそばで見ていたので、分かってくれてまっせ。
何人かがすごすごと場を離れていったけど、それでもこちらを見てくるヤツらはいる。
どれだけ見られようともガキンチョに興味はないね。
やっぱり自宅でハンフリーお手製のお菓子をうまうましながらのお茶が良いわと思っていると、どっかのオッチャンが近付いてきたんだけど、めっちゃロックオンされとる。変態か?
「やあ、コーンウェル伯爵。先日は、お邪魔しました」
「いえいえ、クリフォード殿。こちらこそご足労いただき感謝しておりますよ」
「今日は、奥方は?」
「少々疲れたようでしたので、先に帰らせました」
「そうでしたか。お大事になさってください。アンジー、こちらは、コーンウェル伯爵家当主のドライアス殿だよ」
「アンジェリカ・アッシュフィールドですわ」
「うん、アンジー、もう戻しても大丈夫だから。疲れるだろう?」
「うん?」
「身内相手なんだから、いつものアンジーで良いんだよ?」
「身内?」
この
とか思っていると、アーヴァイン陛下から小突かれた。何すんねんな、マジで。
「アンジー、もしかしなくても国王陛下の御言葉を聞き流していた、なんてこと……ないよね?」
「聞いては、いたにょ」
「アルジャーノン殿、ダメだ、こいつ聞いてないぞ」
「こいちゅ言うにゃ」
「お前なんぞコイツで十分だ」
「アンジー、先程、旦那様が仰っておられただろう?彼は、アンジーの伯父上だよ」
「あぁ、伯父しゃん。あっ、はじめまして、アンジーでしゅ」
挨拶し直したけど、目が点になったままのドライアイスおじさん。
うん?あれ?ドライアイスで合ってた?まあ、いいや。どうせ、伯父さんとしか呼ばないんだから。
どうぞどうぞと席を勧め、給仕の人にお茶を追加で用意してもらった。
確か、私と同い年の後妻さんをもらったんだっけか?後妻ってことは、先妻がいたんだろうから、従兄姉とか、この会場にいるのかねぇ?
「私には、子供はいないんだよ。だから、恐らく私の代でコーンウェル伯爵家は終わりになるね」
「え?終わりになるから作らないにょ?もしくは、作れにゃいとか?」
「姪っ子とする話ではないように思うが、作るのは問題ないし、子供がいれば跡を継げるよ。ただ、今の妻との間に子を作りたくはないだけで」
「ということは、アンジーの子供に継ぐ権利があったりは?」
「もちろんあるとも。むしろ、アンジェリカ様の子が継いでくれるのならば、それほど嬉しいことはないよ」
「んじゃ、そうしよう。そうすれば、その分だけアルお兄様の子供が継げる爵位が残るもの。あ、あとね、アンジーって呼んでいいにょ」
「では、お言葉に甘えてアンジーと呼ばせてもらうよ。アンジーの子が生まれるのを楽しみに待っているよ」
おお、これで心置き無く子供が産める。
いや、だってさぁ、私に子供ができると、その分だけアルジャーノンお兄様の子供が継げる爵位が減るって聞いたら迷うじゃん。
アルジャーノンお兄様って、ママが持参金として所有している土地も継ぐのね。
だから、継げる爵位や土地はそこそこあるんだけどね。それでも、ないよりあった方が断然良いわけだから、私の子供が母方の家を継げれば何の憂いも問題もないわけよ。
私の子供が云々という話でデレェ〜と締りのない顔になった残念な
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