34 やるなら、今?
皆で仲良くゴリッゴリに磨かれて着替えさせられた後は、引き車に乗って城へと向かったんだけど、さすがに今回はティグルも乗せました。
正装して引き車の横を走るってアカンやろ。
とりあえず、ティグルの伯父さんが招待されてこっちに来ているので、そちらとの面会を先に済ませなければならないと、待ち合わせのお部屋に連行、違った、案内されておりまっせ。
案内されて入った部屋には、うちの国王陛下と王妃様、あと、ティグルの伯父さんだと思しき虎獣人の男性と、ちょっと影のあるくたびれた感じが残る妙齢の女性虎獣人がいた。あと、壁際にその他大勢。たぶん、護衛とか、側近とか?そんな感じ?
なんか、虎獣人のオジサン、顔がちょー怖ぇんだけど。歯が出てるよ。歯茎も出てるよ。牙が鋭いっスねー。
威嚇されてる?とか思ってると、ティグルが私の前に出た。
おい、前が見えんぞ。どきたまえ、ティグル君。
「警戒せずとも良い。この場で危害を加えるような御仁ではない」
「いや、むき出しの歯を見せられて、それ言われてもねぇ。あれで笑顔にゃら仕方にゃいけど……、ぅおにょれっ、
「こらっ、アンジー!許可なく口を開くな!それと、言葉遣い!!」
「よい、アランジョナス。この場は身内だけだ、気楽にせよ」
「アラン……え、誰?」
「パパ!パパの名前!!嘘でしょっ、アンジー!?パパの名前知らないとか言わないで!?」
「ごめん、パパは、パパでしかなかっちゃ」
「あらまあ。アンジーちゃん、ママは?」
「でぃーあーにゃーろーじゅ……、いちゅ、言えるようににゃるんだろ……」
客人ほっぽり出してコント始めちゃったけど、いいよね?身内だけなんだし。
と、コントをやってたら、小さく「エディ」と聞こえた。
「母さん……?」
「っそうよ。エディ、エディ……、ごめんなさいっ、あなたを守れなかったっ!!」
「母さんのせいじゃない!!悪いのは、奴隷狩りしてるヤツらだ!!」
「うん?ティーのお母しゃん?」
「あ、はい、お嬢様。俺の母です!」
「おおっ、無事ー、じゃなかっただろうけど、生きてて良かったね」
「はいっ!!」
感動の再会をやってると、お腹に響くような低い声で、「甥のピアスを外してもらうおうか」と、ティグルの伯父さんらしき人が言ってきたんだけど。
ここで言う言葉は、ひとつだけ。ここで言わなきゃ、いつ言えるか分からんからね。
「だが、断る!」
「アンジー!?もうちょっと、言い方!!帰ったら絶対に言語学の教師を増やすからね!?」
「ほほほ、あなた、いくら増やしても同じよ。アンジーちゃん、わざとだもの。ねぇ?」
「にゃんのことー?」
すっとぼけてみました。バレてるだろうけど。
そして、アルジャーノンお兄様が呆れた顔をしてるんだけど、ノリ悪いで?遊ぼうよぅー。
「ティグルム国の王よ、彼のピアスは奴隷の証ではない」
「ハッ!その言葉の何を信じろと言うのだ!」
「鬼神ハンフリーも着けてるにょ」
私の言葉にシーーーンとなる室内。なんでや。
「アンジー、物事には順序があるんだよ。僕とあっちに行ってようね」
「はーい」
離れた場所にあるテーブルセットへと連行されてしまったので、置いてあるお菓子食べちゃる。
おかしいな。私、11歳になったはずなんだけど、扱いが変わってないのは、どうしてなんでしょうねぇ?
あと4年もすれば成人、大人の仲間入りやで?まあ、いいや。
サクサクしてそうなクッキーを除外してターナがお菓子を取り分けてくれたんだけど、これはアホをかました私への罰なのかい?
そう思ってたんだけど、どうやら衣装を汚さないようにとの配慮でした。えー、食べたい。
ジトっとクッキーを見ていると、上から影がさしたので見上げてみると、ハンフリーがいた。
そこから私の横へと移動すると、膝をついて自身のベルトについているカッコイイ小さなバッグから何やら取り出したんだけど、そ、それはっ!!?
「んー、おいちぃ……」
「あ、アンジー、ずるい。ハンフリー、僕には?」
「ございますとも」
「あっ、こら!ハンフリーまでアンジーを甘やかす!!何でクッキーを持ち歩いてんの!?」
「アンジェリカ様が食べたがるかと思いまして、食べクズが落ちないように一口サイズの小さいものをご用意いたしておりました」
「やめて。我慢させることも覚えさせて、お願いだから!!」
「ほほほ、あなた、今更ですわ。お嫁に行かないのだから良いではありませんか」
「ここ、お城!家じゃないの。お願いだから弁えて……」
頭を抱えるパパに国王陛下は笑って済ませてくれているんだけど、何かのお話は終わったんだろうか?
納得はいってなさそうな顔をしてるけど、これ以上文句を言うのは止めてやる。そんな感じの顔をしたティグルの伯父さんがこっちにやって来た。
「エドワードを奴隷扱いしたら、その首を刎ねてやるから覚悟しておけ」
「え、誰?にゃんの話?」
「お嬢様、エドワードとは、俺が母につけてもらった名前です」
「ああ、エディって呼ばれてたね。おお、エディって呼べる!!」
「アンジー、自分で名前をつけておいて噛んで呼べないって、落ち込んでたもんね」
「そうそう。まさしくアホよね」
「そのアホの子アンジーにお知らせが2件あるよ。ティグルことエドワードがティグルム国の国王陛下の姓を与えられて、ティグル・ティグルムという何ともいえない名前を名乗るって言ってるんだけど、どうする?」
何か、トゥインクルトゥインクルみたいなことになってんね。
エドワード・ティグルムでいいんじゃね?
「俺は、ティグルという名前も気に入ってるんです」
「んじゃ、全部くっつけちゃう?」
「そうですね。伯父さん、それでも良いですか?」
「エドワードがしたいようにすれば良い」
「というか、ティーを奴隷扱いした覚えって、あんまりにゃいんだけど、ティーは、どう?」
「ありませんね。周囲の方々も俺をお嬢様の側近のように扱ってくれていましたから」
「だったら、何故エドワードはこの娘の名を呼ばせてもらっていない?」
「ああ、それですか。お嬢様が俺のことをティグルと、ちゃんと呼べたら俺もお嬢様のお名前を呼ぶと、そう約束していたんですけど、どうしますか?」
「エディって呼ぶー」
「ふふっ、かしこまりました、アンジェリカ様。でも、呼べるようになったら、ティグルの方でも呼んでくださいね?」
「はーい」
ということで、ティー君はティグル・エドワード・ティグルムという名前になりやんした。
そんでもって、もう一つのお知らせというのが、私の母方の伯父さんについてだった。
私の「伯父さんなんて、いたにょ?」という返答に対してパパは、「主従揃って同じこと言ってる」と笑った。
なんと、先日の降精霊祭にて高位の癒しの精霊と契約した下位貴族の令嬢が、私の伯父さんのところへ後妻に入ったというのだ。
「え?変態?」
「政治的な思惑があってのことだから、本人を前にしてそんなことは絶対に言わないように、いいね?」
「はーい」
どうやら、変態発言をかましそうなのを察して、事前に釘を刺しにきたみたーい。やだー、どうして分かったのかしらねぇ?
ちなみに、私とアンドリューを産んだ代理母は、現在、契約した精霊を活かして世界を旅してるそうな。
その旅費を稼ぐために代理母になったらしいんだけど、出産って命懸けでもあるだろうに、そこまでして旅に出たかったんかねぇ?
いつか、その旅行話みたいなのを聞いてみるのも楽しそうだけど、どこにいるとか連絡は取れてんのかね?取れてなかったら、母を訪ねて3歩をやってやろう。こっちには金色のドラゴンがいるからね!歩いて探す必要はないんだな、これが。
まあ、探されたくないから連絡して来ないんだろうから、世界にアンジーちゃんの名を轟かせてやろうかな?元気にしてるよ♪てね!
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