28 何の精霊?
すんげぇー光って、そこから現れたのは、ディアナローズママの圧力を10倍か、それよりも更に凝縮させた存在だった。圧迫感がすごい。むしろ、酷い。
純金を溶かしたような派手な金髪に、エメラルドが裸足で逃げそうなほど美しいグリーンの瞳をした美女でやんす。
どっかで見た色の組み合わせ……あ、はい、王族ですね。見慣れてる組み合わせだわ。
「んふふっ、こんにちは、アンジーちゃん」
「あ、はい。こんにちは」
「夫がごめんなさいねぇ?でも、5歳で竜騎士の花嫁になれた幸せ者でもあるかしら?」
「うん?あっ、ボ……。んー、んう?」
ボケたおじいちゃんと続けようとしたら、光が収まって駆けつけた護衛のお姉さんが指をそっと私の口に添えてきた。
私が精霊王をボケたおじいちゃん呼ばわりするのは直っていないため、「ボ」と口にした瞬間に口を塞がれることがたまに起こる。それでも直す気はないで?
「あらあら、アンジーちゃんならば良いわよ。夫が悪いのですから。それよりも、これからよろしくね」
「んあ、あー、はい、よろしくお願いしましゅ。え?」
ボケたおじいちゃん呼ばわりをそんなこと扱いしよったで、この美女。
というか、よろしくお願いされたけど、圧迫感満載な美女と契約してしもうたんやろか?
まっ、いいか。
これで、魔法が使えるぅーーー!属性は何でっしゃろか?
「わたくしは、精霊王の妃です。属性の得意不得意はあれど、全属性が使えるわ」
「わぁー、楽しそう!」
「ふふふっ、ええ、きっと楽しいわよ?」
いぇーい!魔法ゲットー!!
と、思ってパパを見ると額に手を当てていて、ママは「まぁっ」といった感じでお手手を口に添えていた。相変わらず可愛い。圧力は凄いけど。
何か後ろの隅っこからグサグサっと視線が刺さってるような気がするけど、そりゃそうだわな。精霊王のお妃様とかガン見するよね。
とりあえず、契約が出来た出来なかったに関係なく、終わったら両親のところへ合流するように言われているので、護衛のお姉さんとボケたおじいちゃんの奥さんを連れてポテポテとパパとママのところへ向かった。
淑女らしい歩き方とかあるんだろうけど、5歳で竜騎士の花嫁になっちゃったもんだから、かなり自由に育ったんだよね。
パパは額に手を当てたまま、「とりあえず、成功おめでとう」と言ってくれたんだけど、とりあえずって何よ?とか思っていたらママが優しく撫で撫でしてくれたので、イラっと来たのはどっか行った。
ママから撫でくりされているとグロリアーナ王女が近付いてきたんだけど、彼女のことは「リアちゃん」と呼んでおりまっせ。
「アンジーちゃん。成功おめでとう」
「ありがとーう。リアちゃんもおめでちょ……。うぐぅ……っ」
「ふふふっ、ありがとう。大丈夫?」
「だいじょーぶ。引っかかっただけで、噛んではいにゃ……おにょれっ」
「こら、アンジー。今の言葉遣いは何なんだ?というか、どこから引っ張って来たんだ?」
「絵本」
「絵本〜?絵本にそんな言葉遣いなんてないだろう?」
「鬼神ハンフリー
「誰だっ、その絵本を選んだの!?」
「別邸の図書室にあっちゃ」
私とパパのやり取りにクスクスと楽しそうに笑うママと王家の方々。
ええで、ええで、たくさん笑ってや〜。
というか、本邸では第三副料理長をしていて、今は別邸の料理長であるハンフリーは、見た目通りやっぱり武人だった。
図書室にあったその絵本に出てくる鬼神ハンフリーが、うちにいるハンフリーなのではないかと思って本人に聞きに行ったら、照れながらも肯定したんだよね。
子供向けの料理を愛情込めて作ってくれる料理長の二つ名が「鬼神」っていう、ね。
すごい人にご飯を作ってもらっていたもんだ。あ、お菓子もか。
それ以来、鬼神ハンフリー武勇伝シリーズを余すところなく探してもらって、別邸の図書室に入れてもらったんだな〜。
絵本ならすぐに読んでも良いけど、その他の武勇伝は降精霊祭が終わってからだと言われていたので、これから読むのがめっちゃ楽しみ!!
何で、降精霊祭が終わってから?と思っていたんだけど、魔法の存在を知ったときに、「あー、なるほど。それでか」となったんだよね。
たぶん、お話の中には普通に魔法とか精霊とかが出てくるから、降精霊祭が終わっていない子供が読んで、魔力を弄ろうものなら大変なことになるもんね。
階級順にペタペタと丸い鉱物に触れていっている今年10歳になった子供たちなんだけど、中には契約出来ずに肩を落として両親のもとへと行く子もいて、この場でちょっと能天気にはしゃぐのはダメかな?と思ったので、少し大人しくすることにした。
滑舌が瀕死状態なのは気のせいやで?
そろそろあと数人で終わるね。というところで、下位の貴族令嬢が結構な光を溢れさせたんだけど、私ほどではないで?というか、私を超える光となると、ボケたおじいちゃんしか出てけぇへんやろ。
結構いいもん出たじゃーん、と思ったんだけど、何か周りがピリついてんのよね。なんでだろ?
うーん、ああ、そっか。
第一王女である
でも、下位の貴族令嬢なら治療院でじゃんじゃん働いてもらえるんちゃう?
貴族の義務として奉仕活動があるんだけど、高位の貴族やお金持ちの貴族は、お金でそれを終わらせることが多いらしく、下位の貴族や懐の寂しい貴族は能力を使って活動すると、アンジーちゃんは前に習ったのですよ。
ちなみに、アンジーちゃんは未成年なので奉仕活動はまだしなくても良かったんだけど、結婚してしまったので、本来ならばしなきゃならんのよ。
でもでも〜、アンジーちゃん、竜騎士の花嫁だから免除されるんだってさ。存在そのものが国に貢献しているから、それ以上の奉仕活動は必要ないって言われたんだよねぇ。益々ダラダラできちゃう。いいね。めっちゃ幸せ者です。
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