27 待つこと、しばし

 王都の邸には、学園に通っているアルジャーノンお兄様もいて、食事はパパと奥さんのディアナローズ様ことママとも一緒に取ることになっている。

アルジャーノンお兄様が学園に通うのと共に、パパとママも王都へと移っていたので、会うのは一家で帰省していた夏休み以来となるね。


 降精霊祭に参加する、今年10歳になった貴族の子供たちの中にアンドリューはいない。

やっぱり魔力が平民並みしかなく、降精霊祭に参加したところで恥にしかならないので、領地にある本邸にほぼ監禁状態なんだってさ。


 降精霊祭は、城に併設されている神殿にて行われ、フロアの真ん中に水晶玉みたいな丸い鉱物が置かれた祭壇があって、その丸いのに手を当てると光が溢れるらしいんだけど、魔力量が少ないとちっとも光らないんだとか。

だから、平民並みにしか魔力がないアンドリューが手を当てても光ることはないし、精霊との契約なんぞ不可能らしいで?やるだけムダってやつね。


 それでね、降精霊祭にはフロアの周囲に観覧席があって、国王陛下と王妃殿下、ご側室様など、王族たちを真ん中に両脇に貴族家当主夫妻がズラリと並んで、その様子を見られるようになっており、精霊と契約できたかどうかその場で公開羞恥プレイなことになるんだって。

私は竜騎士の花嫁だから契約できなかったとしても「まあ、花嫁だし、別にいいんじゃない?」みたいな雰囲気で終われるけど、他の貴族、それも上位の貴族の子供は、すんげぇープレッシャーだと思うわ。


 精霊と契約できない子もいるとはいえ、それは下位の貴族に多いのであって、上位の貴族でそんなことになれば、最悪家を出されることもあるらしい。


 ……金持ちに転生したしダラダラしちゃる!とか思ってたけど、かなりシビアな世界だったのねん。

今の私には関係ないけど。おほほほほーーー!!


 ということで、パパとママ、夫のクリフと一緒に城へと向かったのだけど、私の衣装はクリフの色を使っているため、暖かみのあるオレンジの生地に雪を散らした感じで銀の刺繍が施され、常緑樹の葉をイメージした刺繍が裾に施されているんだけど、クリフは銀髪にオレンジの瞳なので、緑色は私の瞳の色だね。


 ただね、デザインはグロリアーナ王女とお揃いなのよ。

髪型も宝飾品もお揃いという、双子はこっちだったのか!?みたいな装いとなっておりまーす。


 もちろんグロリアーナ王女が使っている色は、彼女の婚約者である隣国の王子様のもので、深い青色の生地に黒の刺繍が施されてるんだってさ。

黒髪に青い瞳なんだそうです。


 ちなみに、大人の女性はうなじを見せた髪型をするんだけど、この場合の「大人の女性」とは、処女ではありませんよ!という意味の大人なので、白い結婚と呼ばれる旦那に相手をしてもらえなかった奥さんはどうなるのかというと、うなじを隠した髪型をしないとアカンのよ。

そういうご夫人はどういう扱いになるのかというと、「私の旦那、不能なんだぜ」という看板を背負って歩いているようなものなのだとか。


 つまり、世間一般から見て、旦那に相手をしてもらえない可哀想な奥さん。ではなく、旦那が役立たずだと思われてしまうので、白い結婚を続ける男性はいないんだって。


 だが、しかし。

未成年でも女性は結婚できてしまうので、うなじを出しちゃってる成人に近い方をたまーに見かけることもあるそうなんだけど、その場合は「私の旦那は、変態です」となるらしい。


 どの道、夫が悪く言われんのね。


 もちろんアンジーちゃんは、うなじを出してないよ。

まだ10歳だしね。出してたらクリフは変態じゃ済まんで?


 神殿らしき建物に着くと、家族は先に観覧席の方へと向かい、私は神官らしき女性に案内されて中へと入ることになったんだけど、私のそばにはちゃんと別邸から連れてきた女性の護衛がついてます。

既に結構な人数の子供が中にいて、どうやら下位の子供たちから中へと入って行ったらしく、しばらくして女性の近衛騎士を伴ったグロリアーナ王女が入ってきて、扉が閉められた。本でしか知らなかった近衛騎士の生制服!とか、喜んでる場合じゃないんでした。


 国王陛下の開始宣言が行われると、神官らしき女性がグロリアーナ王女をフロアの中央へと案内し、神官さんがフロアの外へと出たのを確認してから彼女は丸い鉱物に手を当てたんだけど、バスケットボールほどの大きさかねぇ?


 グロリアーナ王女が手を当てると鉱物からキラキラと光が溢れて来たんだけど、こういうのをリアルで見ると異世界に来たんだなーと思うわ。

いや、獣人いるけどね。コスプレやと思えばそんなもんやん?カラコンとかウィッグとかあるやん?最近では、つけ毛ならぬ付け牙とかもあるしなぁ。


 てことで、そんなことを思っていると光が収まり、丸い鉱物の上にちょこんと3頭身な感じの可愛らしい女の子がふよふよ浮いていた。ぬいぐるみみてぇ。

青い髪に緑色の瞳をした女の子なんだけど、あれが精霊なのかな?まあ、何にせよ、グロリアーナ王女が契約できたみたいで良かったよ。


 お次は、アンジーちゃんの番やで!

神官さんに案内されて中央まで進み、鉱物の上にペタっと手を置いてみやんした。


 ほわっと温かいのね。なんて思っていると、蛇口壊れたんちゃう!?っていうほどの光が溢れてきたんだけど、これって大丈夫なやつ?パパから何も起こらなければ神官が迎えに来るから、それまで動くな。光が溢れたら手を離すなよ!!って言われたから離さないけどさ。何かあったら手を離していない状況って、危なくね?


 どうすんの、これ?と思ってパパがいる方を見たけど、光が溢れてて周りが見えないっていう、ね。


 はぁー、光が収まるなり何なりするまで待ちますよーだ。

これで精霊との契約じゃなかったら、何の光だって話しよね?


 これで、私も魔法が使えるように……なるよね?


 

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