26 アンジーちゃん王都に行くってよ
アンジーちゃんは、10歳になりやんした。
ということで、その年の年末に王都へ行って、降精霊祭なるものに参加しなければならないのであーる。
10歳で精霊と契約できなければ15歳で再び参加するんだけど、ぶっちゃけ魔法を使ってみたいから契約できるまで粘りたいっス。
とは思うものの、10歳15歳20歳の3回と決められているから、契約できなければ諦めるしかない。
まあ、代替案として魔道具を使うという手もありますからねぇ。
幼少期からのお小遣いは積み木しか買っていないので、たんまりあんねんで?過去の私えらい。よく貯めた。これで心置きなく魔道具買って遊んだろ。
行き帰りは引き車なのかと思いきや、クリフのドラゴンに乗って行くんだって。
街道をグネグネ走るより空を真っ直ぐ進んだ方が早いんだそうな。そりゃそうだろう。
クリフがボケたおじいちゃんから与えられた金色のドラゴンちゃんは、防御シールドなるものを張れるそうで、「風圧とか外敵から守ってくれるので安心だよ」とか言われても、ねぇ?とか思っていたんだけど、ドラゴンから落っこちてもそのシールドがあるから落下することはないんだとさ。魔法ってスゲェーって感じだよね。
でもさ、それなら何で邸が全体的にピリついてんだろうね?
別邸もそうだし、出発の挨拶に寄った本邸もそうだった。
私の場合は、竜騎士の花嫁なので精霊と契約できなかったとしても、その地位は揺るがないので、降精霊祭に関して誰も心配していなかったはずなんだけどなぁ。
やっぱりお空の旅が危ないんちゃう?
背中を預けてゆったり座れるソファーを乗っけたドラゴンちゃんは、嬉しそうに目を細めると「ぷぅー」と鳴いた。
思ってたんと違う!なんだ、この可愛い鳴き声!!怪獣みたいにビリビリ震えるような鳴き声ちゃうんや!?
「ほぁー、可愛いねぇー」
「ふふ、そうだね。でも、それはアンジーと私に対してだけだよ。それ以外の人に対してこんな鳴き声を出したりしないから」
「そうなにょ?……あー、また噛んだ」
「大丈夫だよ、降精霊祭のときに近くにいるのはグロリアーナ王女様だけだから」
「それ安心要素にならないにょ……」
グロリアーナ王女とは、たまに手紙のやり取りをしてるんだけど、その始まりは彼女からのお礼の手紙だった。
ボケたおじいちゃんがうっかり5歳で試練の塔へと呼んだとき、グロリアーナ王女が熱を出しているというのを私が教えたことで、癒しの精霊をつけてもらえたんだと。
そのおかげで熱も治してもらえたし、自室に帰るまでの間はその精霊が一緒にいてくれたので、怖い思いをせずに済んだのだと、いい香りのする可愛らしい手紙と共にお礼の品が届いた。
キラキラとカットされた容器に色とりどりのキャンディーが入っており、まるで宝石箱みたいなそれは、未だに私のお気に入りでっせ。もちろんキャンディーは全部食べちゃって、追加をターナが入れてくれてあるので、賞味期限は大丈夫やで?
あっちにあるのが何で、あれはどこそこで、とクリフのガイドを楽しみながら空の旅を満喫しているんだけど、そんな私は彼に横抱きにされてソファーに座っている。いつものことやな。慣れたで?だって、降ろさへんねんもん、しゃーないやん?
そして、王都が見えてきたんだけど、広いわぁー。
でも、建物がゴチャゴチャしてるとかはなく、どちらかというとパリっぽい?画像でしか見たことないけど、そんな感じちゃうかな?ただ、真ん中にあるのが凱旋門ではなく城なんだろうけど。
真ん中に城って、防衛としてはどーなん?大丈夫なものなの?その辺の知識はほとんどないから何も言えんけど、まあ、大丈夫だからこそ真ん中にあるんでしょう。
上空を一回りしてから何の躊躇もなく、とある豪邸の庭へと降り立ったドラゴンちゃん。
入るのに審査的なものはいらないんだろうか?めっちゃ外側の門とかに並んどったで?
「金色のドラゴンは、竜騎士の花嫁かその夫しか乗れないからね。審査は必要ないんだよ。ただ、あとでアンジーが王都へ入ったことだけは報告しなきゃいけないけど、それはこっちでやっておくから」
「そうなんだ。ありがちょー、クリフ……。この滑舌どうにかにゃらんかにゃ!?」
「ふふっ、まあ、気を抜かないように、ゆっくり喋れば大丈夫なんだし、それにアンジーに声をかけても許されるのは王族だけだからね。他に声をかけられても無視すればいいよ」
竜騎士の花嫁になる前は、代理母生まれの公爵家令嬢でしかなかったため、貴族家の当主であれば私に声をかけることは可能だったそうなんだけど、今は出来ないし、声をかけてきたら無視するのが正しいマナーなんだとか。
無視が正しいって、意味が分からんのだけど、そう言われているので、それに従いまっせ。何せ、生まれてこのかた公爵家の敷地から出たことないもんでね。常識が分からん!
ということで、クリフに姫抱っこされたままドラゴンちゃんから降ろされて、そのまま王都にあるアッシュフィールド公爵家邸へと入って行ったんだけど、ここにいる人たちって、ほとんどが初対面なんだよね。
私がドラゴンで行くということで、私付きのメイドさんたちなんかは先に出発しており、到着したのを確認してから私を連れて来てんのよね。
ちなみに、魔道具付き引き車で3日ほどかかるそうなんだけど、そのくらいなら一緒に旅しても良かったのに、と少し残念に思ってます。
魔道具付き引き車は、回転機構がついた魔道具が引き車についており、それを馬みたいな生き物に牽引させる高速移動車なんだって。
馬車にエンジンつけてお馬さんが全力疾走みたいな?そんな感じなのかねぇ?
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