23 3年後

 人妻になってから3年が経ち、アンジーちゃんは8歳となりやんした。

8歳の人妻。相変わらず字面が酷いでござるよ。


 改装も半年ほどで終わり、今は別邸に戻ってるんだけど、この3年で分かったことといえば、私の専属積み木師ティー君が何かスゲェかった、ということ。


 私が積まれた積み木を崩すのが大好きということで、ティー君はとっても前衛的な積み方をしてくれていたんだけど、彼が「ココですよ」と教えてくれた一点をつつくと、一気に全部崩れるという仕様だったのよ。

しかも積み木27セット全てを使って築き上げられた超大作。おかしくね?そんなにたくさん使って一箇所つつくだけで全部崩れんねんで?普通に考えておかしいっしょ?


 でもね、アンジーちゃん普通じゃないから気付かなかったんだなー、これが。

一緒にいたターナは私が楽しければそれで良いという優しいママンなので、深くは考えていなかったのよ。


 それでね。パパに積み木が27セットもあるとバレましてね。

使いもしないのに何故そんなに買ったんだと、文句を言われまして、「全部使ってるもん!!」と、初めての反抗期(笑)を迎えたのでありますよ。


 いや、ぶっちゃけ27セットもあるとは思わなかったんだけどね。

それは、内緒やで?


 ということで、全部使ってると言い張るならやってみせろ、となりまして。

別邸から積み木27セットを持ってこさせて、それを本邸の子ども部屋に運び込み、ティー君に積ませた結果、パパは頭を抱えちまった、と。


 何か、建築系の才能が異常なんじゃね?みたいになって、記憶力もズバ抜けていることからティー君は出世しちゃったんだな。


 そのときに獣人奴隷には、階級があると教えられまして、最下級はアンクレット、次に与えられるのがベルト、次がブレスレット、チョーカー、ピアスという順番で上がっていき、ピアスをしている獣人奴隷は、平民よりも贅沢な暮らしをしていることもあるんだって。

そんでね、ティー君はうちに来たときはアンクレットのみだったんだけど、私の命を救ったときにベルトとブレスレットを与えたんだよね。意味も分からずにゼクスからベルトとブレスレットを用意してあげてくださいって言われたから、その通りにしただけだったんだよね。


 ティー君の才能が凄かったことで、その才能を積み木を積むためだけに使うのはもったいないと思ったパパが、彼を貸してくれと言い出したのよ。

もちろん、「やーだっ!!」と全力で拒否ってたんだけど、ゼクスが折衷案を出してくれて、ティー君に更にチョーカーとピアスを与え、私が積み木に飽きるまでは設計図などのデスクワークをして、積み木をしなくなったらティー君は現場に出るということになった。


 一生、積み木してやる!と燃えてたんだけど、ティー君が目をキラキラさせていたから、それは諦めることにしたよ。

パパの顔がちょっとムカついたから、ディアナローズ様に「パパがイジメるー!!」と、泣きついてやった。ざまぁっ。


 ということがありましてね。

今年、めでたく成人したティー君は名前をティグルと名乗り、設計士として働き出しました。


 あ、そうそう。ティー君ティグルって虎獣人なんだけど、うちに来た当初はガリッガリの少年でさ、私がちゃんとご飯をあげてほしいと厨房に頼んだことと、私の命を救ったということで、ティー君はご飯のおかわり、というかお腹がふくれるまで食べられるようになりまして、すっげぇデカくなった。ゴリッゴリのマッチョ。ちょっとビビるくらいの迫力になったんだけど、顔はベビーフェイスっていう、ね。ギャップがスゲェことになってんの。


 ティー君ティグルの主人が公爵家令嬢でもあり、竜騎士の花嫁でもあるアンジーちゃんということで、彼を獣人だからと、奴隷だからと、酷い態度を取る人は今のところいないそうな。

むしろ、彼がいなかったら竜騎士の花嫁が誕生しなかったとあって、とても待遇が良いんだってさ。


 そんなこんなで8歳になったアンジーちゃんはというと、今日から新たに追加される授業があるそうな。

本来は10歳になってから始まる授業なんだけど、私が竜騎士の花嫁になってるから前倒しされたんだって。


 ということは、つまり、あれかな?

キャベツ畑か、ミツバチか、コウノトリの話かな?アンジーちゃん、前世でも経験なかったんスけど、大丈夫なんだろうか?


 と、思っていた時が私にもありました。

そんな、ピンク色の授業じゃなかった。


 魔法ーーーーーっ!!!

この世界、魔法あったんかいっ!!マジかよ!!知らんかったよ!!


 なんかね、魔力を蓄えておく臓器で、魔臓まぞうというものがありまして、幼いうちに魔力を放出してしまうとその魔臓が育たなくなって、最悪、身体の成長も阻害されて障害が残るそうな。えっ、こわ。無意識で放出したら、どうすんねん。


 そう思って聞いてみると、めちゃくちゃ集中して探さないと分からないし、魔力を動かせるようになるには、人によって数年はかかるんだそうな。

だから、魔力や魔法の存在を教えなければ、放出したりして失うことはないんだけど、悪い大人というのはどこにでもいて、そういう人が魔力を放出する道具を子供につけて魔力を減らしたりすることもあるんだって。


 そして、その危機に私が遭遇していたのだと、このとき知らされた。


 恐らく前世の記憶を有していたであろう双子の兄アンドリューが、魔力を増やそうと放出した結果、足りなくなった魔力を私から無意識に奪っていたそうな。

そのため、幼児期の私はお昼寝が多かったり、滑舌が死んでいたりしたんだって。


 お前のせいか!!私の滑舌が悪かったのは!!8歳になった今でもたまに噛むんだぞ!?どうしてくれる!!


 と、まあ、そういうことがあったもんで、アンドリューがこれ以上私から魔力を奪わないように、本邸へと連れて行って監視下に置いたんだとさ。

しかも、アンドリューは乳幼児期から魔力を放出していたもんで、魔力は平民並みにしかなく、味覚も壊れており、視力も生活に支障はないけど少し悪いらしい。


 そんなアンドリューは、魔力がなければ公爵家の一員として何の役にも立たないので、勉強を詰め込むために本邸にて徹底的に扱かれたそうなんだけど、出来ないことを周囲のせいにするので、半ば放置気味なんだとか。


 放置しといて育つのはゲームのキャラだけやで?

そんなゲームあったよね?やったことないけど。

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